この研究は、アメリカ合衆国の連邦下院議員・上院議員を歴任したダニエル・イノウエが日米関係でいかなる役割を果たしたのかを、1970~80年代を中心に解明するものである。 研究目的は、①日系アメリカ人政治家の日米関係への関与を分析し、②日米関係、アメリカ外交における連邦議会の役割を解明した上で、③日米関係の変容をアメリカの内政との関係で検討しアメリカ政治の文脈に位置づけることである。そのために、イノウエが特に影響力を発揮した2つの事例の分析と、同時代を生きたG・H・W・ブッシュとの人物比較を行う。中心的な手法として、①資料および文献調査による政治過程分析と、②イノウエの個人的な役割を把握するためのインタビュー調査を用いることを計画した。 具体的には以下の通りである。 ①日系アメリカ人の歴史、行政府=立法府関係の理論と実証研究、日米関係史などの文献を本研究の分析軸から再検証すると同時に、一次資料を精査していった。 ②イノウエに関しては存命の関係者が多いため、インタビューを重ねることで収集した資料を補強・修正することに努めた。 2023年にハワイ大学図書館でダニエル・イノウエ文書を調査し、2024年3月にはオーストラリアでインド太平洋の国際関係などについて調査を実施した。この間、1970年代以降のアメリカの内政と外交についての研究を重ね、日米関係のみならず、アメリカ国内政治、インド太平洋地域の国際関係にイノウエが果たした役割や彼が残した影響などについて分析を進めた。連邦議会が外交に果たす役割についても、一つのモデルを提供している。
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