研究課題/領域番号 |
20K01516
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
金 孝淑 関西外国語大学, 英語国際学部, 准教授 (50708443)
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研究分担者 |
David Potter 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00329757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民主化の促進 / 日本 / 韓国 / 国際規範 / 国内制度 / 国際選挙支援 |
研究実績の概要 |
本研究では、研究期間内に①国際規範としての「民主化の促進」と新興国による民主化支援に関する先行研究の分析と整理、②日本と韓国における「民主化の促進」規範の制度化の現状と民主化支援の具体的事例調査の二点を実施する計画である。研究初年度である2020年度は、①のために、「欧米諸国による民主化の促進」、「新興国の台頭が国際協力体制に与える影響」、「韓国の民主化と民主化支援」、「非西洋諸国と民主主義」に関する文献と論文を収集し、読み進めた。②のためには、当初現地調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大により、実行できず、文献調査やオンライン上で入手可能な資料で研究を進めた。その成果は、以下のように取りまとめた。 1)まず、「民主化の促進」の一環として実施されてきた国際選挙支援を事例に、日韓の取り組みを比較した論文を刊行した。そこでは、日韓の国際選挙支援がそれぞれ平和構築、持続可能な発展の支援に重点を置いている一方で、分散的実施体制からくる政策の一貫性が低いことや選挙関連の機材供与・短期研修等の手続き的民主主義に重点を置いた支援を行っている等の共通点を見つけ、今後の更なる研究のたたき台を作ることができた。 2)また、韓国による「民主化の促進」の取り組みとして「世界選挙機関協議会」の設立と運営における同国の関与実態を調査した。同協議会は、開発途上国での公正、公平な選挙実施を支援することを目的に、2014年に設立された国際組織である。韓国はその設立を主導し、財政・運営を全面的に支援してきた。しかし、その強い関与が同協議会の国際組織としての設立目的の実現はもちろん、韓国の多国間チャンネルを通じた民主化の促進という試みにも行き詰まりをもたらしている。以上の研究成果は英文原稿に取りまとめており、研究代表者が執筆する書籍の一つの章として出版する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は文献サーベイと日本と韓国における現地調査の実施を予定していた。文献サーベイに関しては、関連論文と書籍を必要に応じて海外から取り寄せる等して、予定通り収集し、順調に読み進めることができた。しかし、現地調査に関しては、新型コロナウィルスの感染拡大により、海外はもちろん、国内出張も困難な状況が続き、実施できなかった。そのため、今年度はオンラインで収集可能な資料(例えば、国会会議録、政府発行報告書・政策文書、新聞記事等)を読み進め、その結果を論文としてまとめることができた。また、研究代表者と分担者との打ち合わせも対面での実施はかなわなかったが、Zoom、電話、SNS、メール等の手段を使い、意見交換と議論を重ねることができた。これらの状況を総合し、本研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初、研究2年目に予定していた途中成果の報告に関しては、既に国際学会(オンラインでの実施)とウェビナーの形式で2件実施する予定となっている。これらの発表では、日韓の民主化支援の現状を報告する予定である。また、そこでの議論をもとに、日韓の事例が既存の「民主化の促進」のための国際協力体制に与える意義を考察する分析に本格的に取り組む予定である。一方で、当初予定していた日本(東京)と韓国(ソウル)における現地調査は、新型コロナウィルスの感染拡大により今後の状況が依然として見通せず、実施できない可能性がある。そのため、現状で入手可能な文献、資料を収集することで研究を進め、既に入手済みの文献と合わせて「民主化の促進」のための国際協力体制と新興国の台頭の影響に関する分析枠組みの精緻化を図っていく。また、その成果を研究ノート、または、レビューエッセーの形で取りまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、海外出張はもちろん、国内出張も実行できなかった。そのため、当初旅費として計上していた経費を使用できなかった。2021年度においても新型コロナウィルスの感染拡大状況が見通せず、国内・海外出張が実現できるか不透明である。また、学会やセミナー等がオンラインで実施されるようになっているため、研究成果報告のための旅費も使用できない可能性が高い。そのため、研究期間の延長を考慮しなければならないと考えている。
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