本研究は、研究期間中の新型コロナウィルスの感染拡大により、十分な研究を遂行することができなかったことから、研究期間の1年延長を申請し、許可された。延長期間にあたる2023年度は、以下の成果を得ることが出来た。 1)昨年度の研究では、ミャンマーで発生した軍事クーデターに対して、日韓(エンゲージメント、ディスタンシング)は西側先進諸国(経済制裁等)とは異なる対応をとったことを指摘したが、このような日韓による「民主主義の促進」規範の実施上の分岐傾向は、①ミャンマーとの関係を維持することで確保可能な国益(特に民間企業の進出に関わる経済的利益)、②市民社会の役割、③「民主主義」の国内的セイリアンス等、国内的要因に影響されることを説明できた。以上の研究結果は論文として取りまとめて国際会議にて発表し、編集書の一部として出版するために編集者に原稿を提出した。 2)「民主主義の促進」に関する規範的理論によれば、「民主主義の促進」を実施することは同規範を内面化した結果である。しかし、「民主主義の促進」を実施する方法は多岐にわたり、実施主体・実施相手によって採用される方法は異なる。規範の内面化は、①規範の制度化、②規範の実施の二つの側面に分けることが出来るが、本研究では以上の問題を後者の問題として位置づけた。その上で、実施方法の強制性を基準に、①Control、②Political Conditionality、③Persuasion、④Assistanceの4つで構成される「民主主義の促進」の実施に関する分類法を提案した。従来の分類法は強制的手段に重点を置きすぎていたり、二分法的分類をしていたりしていたが、これにより「民主主義の促進」の実施に見られる多様性を十分にカバーする分析枠組みを構築できた。このように理論的背景と分析枠組みを精緻化させた原稿はレビューのコメントを受け、現在修正中である。
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