研究課題/領域番号 |
20K01518
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 早苗 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30466073)
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研究分担者 |
湯川 拓 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80728775)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地域機構 / 事務総長 / 国際機構 / ASEAN / 域外国 |
研究実績の概要 |
2022年度は、第一に、2021年度で収集した、国際機構(その多くが地域機構)の事務総長の権限に関するデータを分析し、論文を執筆、雑誌投稿を試みた。同時に、データの加筆・修正を行い、より説得力のある分析を試みるとともに、同様のデータを使って別の切り口で論文を執筆することを検討した。 第二に、一つの事例について域外国との関係を分析する研究も開始した。一つは、東南アジア諸国連合(ASEAN)を取り上げて、その域外関係を探るものである。ASEAN諸国は、ある時期から「一体性」を強調してきた。それは、域外国に対する「ASEANの中心性」とも密接に関係する。一体性を強調する背景を探るため、ASEANの外相会議の共同声明の文言、および外相会議の各国外相のスピーチをテキスト分析する方法を模索した。リサーチアシスタントを雇用し、文書のデジタル化、キーワードを拾う作業を実施した。 もう一つの事例分析は、アフリカの地域機構と欧州連合(EU)との関係である。EUは、アフリカの地域機構と安全保障協力を深化させてきた。そうした域外国からの援助が、アフリカの地域機構の間の関係をどのように規定したかを探るため、先行研究レビューを実施した。EU自体が安全保障協力を進めるようになったのは1990年代からであり、そうしたEU自体の変化を通じて、EUは安全保障アクターとして域外での活動を活発化させてきた。とくに、アフリカ諸国への支援が目立っている。その支援の背景には、アフリカ諸国に対する従来の開発協力がアフリカの脆弱国家を原因として行き詰まりをみせたということがある。そのため、EUは、アフリカ諸国の政治的安定・民主化のための能力開発、平和維持活動への支援などに注力するようになった。しかしながら、アフリカの地域安全保障における重要なアクターである地域機構に対してEUがどのような関与をしてきたのかについてはいまだ、分析の余地がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響で引き続き、海外での調査は困難だったが、早い段階で、別の研究方法(インターネットを活用した資料収集など)を模索してきたため、データの構築や資料収集が進んだ。少し遅れが出たとすれば、リサーチアシスタントの雇用にやや手間取ったため、作業開始が遅れたが、それも年度の後半にはほぼ解決した。
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今後の研究の推進方策 |
国際機構の事務総長の制度的要素と個人属性に関するデータの精緻化を進め、別の切り口でもう一つ論文を執筆に取り組み、英文雑誌への投稿を試みる。計量分析に必要なデータは収集済みであるが、新たな切り口により、事例の選択は変わるため、事例分析を改めて実施する必要がある。 もう一つの事例研究について、ASEANの域外関係については、リサーチアシスタントの作業が終了次第、データの精緻化を行い、計量分析を実施できればと考えている。EUとアフリカ地域機構との関係については、先行研究レビューを完了し、一次資料の収集を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
リサーチアシスタントを雇用して作業を進めたが、リサーチアシスタントを引き受けてくれた学生が都合により、作業を中止せざるを得なかったことで、リサーチアシスタントを探すのに苦労したこと、資料のデジタル化が当初の想定通りに順調に進まなかったことで、リサーチアシスタントの謝金支出が当初の予定よりも少なかった。また、他の研究費(2022年度まで)でデータ収集のためのデータベース利用の資金を賄えたため、この科研費を使わずに済んだ。 データベースの利用にかかる支出が多くなると思われる。また、2023年4月から、リサーチアシスタントの作業も順調となり、2023年度は謝金に多くの支出を見込んでいる。
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