研究課題/領域番号 |
20K01520
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
東野 篤子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60405488)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | EU / ロシア / 東方パートナーシップ / 近隣諸国 / 西バルカン / ウクライナ / ジョージア / ベラルーシ |
研究実績の概要 |
本研究課題初年度にあたる2020年度は、コロナ禍のため海外での研究調査や学会報告を行うことが全く出来ず、その意味では当初の予定に完全に一致した進め方とはならなかったが、本研究課題申請準備のために2019年度中に自費で買い集めておいた書籍などを用いてデスクリサーチを集中的に実施した。 本研究課題のテーマは、①EUとロシアの関係の推移、②EUとロシアの狭間に位置するヨーロッパ諸国(具体的には西バルカン諸国や、ウクライナ、ジョージア、ベラルーシなどの旧ソ連諸国)の状況、③EU加盟諸国の対ロシア認識の変遷、④ロシアの対EU(およびEU加盟国)認識の変遷、である。このうち、とくに②に関しては、昨年度はとりわけ、8月の大統領選以降混乱が顕著となったベラルーシに関し、EUとの関係構築の経緯とその問題点について分析し、研究成果を公刊した。また③に関しては、とくに中・東欧のEU加盟国の対ロシア認識(その共通点と相違点)について集中的に分析した。この中・東欧諸国の対ロシア認識に付随する重要な要素として、北大西洋条約機構(NATO)を中心としたヨーロッパ安全保障秩序における中・東欧の位置づけや、中国の中・東欧進出という新しい状況の検討を加味した分析を行った。とくこの諸点については、コロナ流行下にはあったが、感染対策には気を付けつつ、複数の在京の中・東欧諸国の大使館員の方々にお会いし、インタビューをすることもできた。 このようなデスクリサーチで得た研究成果として、日本語査読論文を1本、日本語での招待論文・レポートを3本公刊し、オンライン学会での研究報告を英語3本行うことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題初年度にあたる2020年度は、当初の予定としては、研究対象となっていたが自分自身の研究上の土地勘に乏しかったロシア、ベラルーシ、バルト諸国などを積極的に訪れ、インタビューを行うことを予定していた。しかしコロナ禍のため海外での研究調査や学会報告を行うことが全く出来なかったため、当初の予定と完全に同一ではないという意味で「やや遅れている」とした。とりわけ予算上は、①当初予定していた海外調査出張がなくなった、②海外の研究協力者とともに執筆し、出版を予定していた研究成果の締め切りが、コロナ禍を理由として大幅に伸びたため、論文の英文校正料として見込んでいた金額を使わなかった、③海外での学会報告も、渡航をせず、すべてオンライン学会・国際会議で研究成果を発信した。学会登録料などがかからなかった、などの理由で、2020年度の支出予定額はすべて次年度である2021年度に繰り越すことにした。しかし、「研究実績の内容」および「研究発表」で示す通り、デスクリサーチを実施することにより、複数の成果を出すことは出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、コロナウィルスの流行やワクチンの接種状況、渡航制限等の状況にも左右されるが、2020年度に予定していたにもかかわらず実施できなかった海外での聞き取り調査を一部なりとも進めたい。EUの対ロシア認識およびロシアの対EU認識は、センシティブな部分も多く含むため、オンラインインタビューなどでは成果が期待できないのが実情である。このため状況が許せば現地調査が少しでも進められるよう、準備を進める。 研究成果の執筆に関しては、2020年度に十分に進められなかった内容、とりわけ①のEUとロシア関係の変遷の経緯に関する論文公刊を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、合計で3週間程度予定していた海外調査に行けなくなり、合計10日間程度で予定していた国際会議がすべてオンライン開催されたため、計上していた海外旅費が使用できなかった。 また、論文の英文校正料として計上していた予算も、編者の都合で出版が次年度に延期されたため、2020年度中に支出できなかった。 2021年度の使用計画としては、コロナウイルス流行の状況次第ではあるが、主に海外調査旅費として使用する予定である。ただし、2020年度と同様に海外調査にも海外の学会報告にも行けない場合には、論文投稿料・オープンアクセス費等、成果発表のために使用する予定である。
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