研究課題/領域番号 |
20K01520
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
東野 篤子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60405488)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | EU / ロシア / ウクライナ / 侵略 / 東方パートナーシップ / 欧州近隣諸国政策 / NATO / 加盟交渉 |
研究実績の概要 |
2023年度は、本研究課題が大きな柱のひとつとしていた「西側世界の対ロシア認識の変遷」についての調査分析を進めるため、所属大学からサバティカルを取得した上で、オーストラリア国立大学ヨーロッパ研究所(ANUCES)に1年余り滞在し、研究を行った。2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵略が継続中であったため、ANUCESでは所属研究者(所長のアン・マクノートンや研究員のカイル・ウィリアム、ウクライナに出自を持つ研究員のソフィア・ミカクなどの諸氏)と連携して研究を進めながら、以下に取り組んだ。 ①ロシアによるウクライナ侵略の展開に関する即時的分析と発信(時評やコメンタリーの他、国内外メディアへのブリーフィング、海外の大学やシンクタンクでの研究成果の評価)、 ②ロシアによるウクライナ侵略に関するオーストラリアの見方・認識(「知識共同体(epistemic community)」や、影響力の強い欧州からの移民コミュニティ等が主な分析対象)、 ③本研究課題申請時には中心的な分析対象として想定していなかったものの、2022年の全面侵攻以来重要なテーマとして浮上してきた「ロシアによるウクライナ侵略に伴う欧州の中国観の変化」に関する論文の執筆と発信。 ④本研究課題の成果の単著執筆。これは、1989年のいわゆる「東欧革命」から2022年2月のロシアによる全面侵攻、そして現在にいたるまでを「欧州における『危機の三十数年』」ととらえ、ロシアと西側諸国との関係構築の過程を時系列的に分析し、ロシアと欧州とのあいだでの認識の齟齬の発生と定着・変容を明らかにしようとするためであり、2025年の刊行を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はサバティカルを取得することが可能であったため、学務の負担から離れて研究を集中的に進めることが出来た。とりわけ、ロシアによるウクライナ侵略の即時的分析を時期に叶った形で行うことが出来た。それ以外にも、ウクライナによる反転攻勢と兵器供与問題、G7広島サミットにおけるウクライナ問題とその外交的成果、EUの加盟交渉開始を巡るEUとウクライナの交渉など、2023年中は多くの重要な出来事があり、その機会を逃さず捉えて即時的分析を発信し続けることが出来たことにより、研究を前に進めることが出来た。とりわけ英語での発信に力を入れ、(1回の学会での複数の報告をカウントすると)11回の英語研究報告を行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本来2024年度は本研究課題の最終年度にあたるが、ロシアによるウクライナ侵略が終息の気配を見せないため、最終年度を2025年度に延長して分析を続けることを想定している。その上で、2024年度の重点は、1989年から現在までの欧州・ロシア間の関係構築に関する学術図書の執筆を進め、当該年度中にラフドラフトを完成させることである。とりわけ今年度に関しては、2003年のジョージアのバラ革命、2004年のウクライナのオレンジ革命、2008年のロシア・ジョージア戦争など、2000年代の欧州と旧ソ連圏を巡る様々な出来事に対し、欧州諸国がどのように対応し、それがいかに欧州の対ロシア観に影響を与えたかをめぐる分析を重点的に行っていく予定である。 これに加えて、ロシアによるウクライナ侵略に関する即時的な分析も社会的な要請が高い仕事であり、本研究課題の内容とも直接的に関わることから、今年度も継続する。最後に、本研究課題申請時には中心的な分析対象として想定していなかったものの、近年重要性が増しつつある「ロシアによるウクライナ侵略に伴う欧州の中国観の変化」についても、複数の機会において執筆・発信がすでに予定されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度はオーストラリアに滞在していたため、日本で購入して用いたかった書籍の一部が購入できなかった。次年度に持ち越し、購入にあてたい。
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