研究課題/領域番号 |
20K01531
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
大島 美穂 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (20203771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 戦間期 / 欧州国際秩序 / ノルウェー北部 / 極地帝国主義 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦間期ノルウェーの極地領土要求運動に見られる膨張主義と国際協調主義の相克におけるロジック並びに国内外の関係を明らかにし、当時の欧州新興諸国あるいは独立を志向する民族の中に顕著であった、こうした領土要求を含んだナショナリズムの動きが、なぜ、ノルウェーでは国際協調主義に転じることになったのかを考察することにあった。 本年は研究の第二年度にあたるため、現地でのフィールドワークを計画していたが、COVID-19の感染拡大の中で、外国人の入国制限によって渡航ができず、引き続き資料収集と先行研究の分析、検討に焦点をあてた研究を行った。戦間期研究は内外において研究が深まりつつある分野であり、特に国際連盟への新たな研究も始まっており、ノルウェー研究との比較で興味深い事実が確認できた。 昨年度は先行研究の分析、並びに本研究の今後の課題を明らかにするためにバルト=スカンディナヴィア研究会発行『北欧史研究』に研究ノートを投稿し、当時のノルウェーの領土拡張主義運動のプロセスに焦点を当ててその概要を明らかにし、同時に本領土要求が国際司法裁判所において退けられる中で、なぜノルウェー政府は反論せずにそれを承認したのか、また全国的に大きな盛り上がりを見せていた拡張主義運動もこれを機に沈静化していったのか、という問題解明の縁を得ることができた。今年度は、新たな資料収集が困難であり本格的な歴史研究が難しかったために、上述の問題設定に沿って、その後のノルウェーのナショナリズムと国際協調主義の葛藤を特に若者の政治活動を通じて明らかにし(バルト=スカンディナヴィア研究会報告)、また第二次世界大戦中のノルウェー・ナショナリズムと諸外国の関係についてアウトリーチ活動を行ない、同時にCOVID-19への北欧諸国の政策分析(『国際法外交雑誌』)の中で、ノルウェー・ナショナリズムの特色を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画ではノルウェー現地に赴き、資料収集並びに現地の研究者との意見交換を行うこととなっていたが、2020年春より国際的に猛威を振るってきたCOVID-19の感染予防からノルウェーに居住していない外国人の入国禁止制限が敷かれ、2021年になっても3回のワクチン接種が終了していない外国人への制限は変わらず、渡航が叶わない状況が続いた。その結果、当時の新聞や一次資料、また関係者へのインタビューも行うことができず、その点では研究の進捗はやや遅れているといわざるを得ない。これについては、可能な限り先行研究を入手しその検討を行うことで、今後渡航が叶うような状況となった際の準備作業を進めることとしているが、一時資料へのアクセスが難しい中で、新たな歴史研究として発表することができずにいる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度、21年度に実施できなかった現地での関係者、研究者へのインタビュー、意見交換の実施、並びに公文書館、極地研究所、中央図書館での資料収集を進める。 具体的にはノルウェー議会並びに政府の文書を閲覧し、当時の政府決定の理由に関する分析、議会での議論の内容を明らかにする。さらに領土要求運動の中心人物ホールの活動、彼に従う形で民間のグリーンランド探検活動や領土要求運動に集っていた活動家の実態を明らかにすべく、当時の新聞を、地方紙も含めて閲覧し、また後の極地研究所となるノルウェー・スバルヴァール・北極海研究所で資料収集、インタビューを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰り返し説明したように、2020年、21年度とCOVID-19の世界的な感染拡大の中で、渡航を計画していたノルウェーでも、居住していない外国人の渡航禁止が敷かれ、その後制限は緩和されたものの、ワクチンの3回接種が義務付けられ、渡航できない状況が続いた。日本でようやく3回目のワクチン接種が叶った際には年度末となっており、既に渡航できる状況にはなかった。そのため、旅費と資料整理のための人件費の使用ができなかった。 2022年度は渡航、資料収集を行う計画であるので、旅費と収集した資料整理のための人件費が発生する予定である。
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