研究課題/領域番号 |
20K01538
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
長瀬 由美 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (60563989)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カトリック / グアム司教ミゲル・アンヘル・オラノ / 第二次世界大戦 / 史料の量的・質的分析 / スペイン / アメリカ / 日本 / 外交 |
研究実績の概要 |
・スペインのナバラ・カプチン会出身のグアム司教ミゲル・アンヘル・オラノ猊下が残した、自身の任務遂行に関わる史料(1918年~1970)を質的・量的に分析した研究論文を西語で2本執筆した。日本に連行され、強制滞在させられた期間に記した「編年記」についての質的・量的分析は、その豊かさと重要性に鑑み、他の期間の史料の分析から独立させた。「編年記」には、日々細かく付けられた、グアム司教としての外交、職務遂行以外に、ファシズム下に置かれた日本の教会や他宗教への政策、また日本の文化に関する鋭い考察が述べられていることが明らかになった。その他の時期に書かれた史料からは、グアム原住民のみの構成となったカトリック教会を、遠隔の地の同胞や善意の人々のサポートを乞い、筆を揮って護ろうとする、追放の身におかれた司教オラノの姿、そしてその正当な懇願に応えようとする人々の想い、行いと言葉が、交わされる書簡から浮き彫りになった。これらは、戦時という国々の政治的思惑が行きかう中、カトリック教会による平和に向けての働きかけが、このような修道者一人ひとりの日々の祈り、身を挺した行いと言葉により支えられていたことを如実に表している。 ・日本軍侵攻により、その支配下に置かれていく1941年~1942年のグアム島で生き延びたオラノ猊下の生々しい証言を史料から抽出し、スペイン人カトリック司教の見た戦時下の惨状を明らかにした論文を西語で2本執筆した。捕虜同然の扱いで日本へ強制連行された、日本の友好国スペイン出身のオラノ猊下は、戦時に日本がグアムで行った、人道に反する様々な不正を書き残している。不都合な事実を消す力が働く戦時に、平和を希求する勇気ある態度である。我々は歴史へのこれらの証言を真摯に受け止めなければならない。 ・ファランヘ党日本支部長との会食で司教オラノが行った教会のあり方に対する教導的な外交についての英語論文。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所期の目的の一つであったスペインとイタリアにあるカプチン会史料、また教皇庁の史料、スペインの外交史料などを収集して、オラノ自身の言説を脇から固め、本研究に取り込まねばならないが、コロナ下で国際間の移動が困難であったため、進んでいない。可能になるのを待ち、今年度中に収集が完了できるようにしたい。 アメリカ海軍の史料収集は、この次の段階になるが、移動が困難であったためのずれ込みにより、今回のプロジェクトに収まりそうではない。動けない中、日本国内の史料についても同様のことが起こった。 また、オラノ自身が書き溜めた、あるいは纏めた史料を量的に分析することに予定以上に時間がかかったが、その成果はスペイン語による2本の論文に結実した。 一方で、コロナ下でもzoom開催による3つの学会において、スペイン語・英語・日本語による研究発表の機会を得た。スペイン語2本、英語1本の論文に纏めることができ、オラノのカトリック思想・言行を集中的に整理する段階において一定の成果が出せたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、スペインとイタリアにあるカプチン会史料、教皇庁の史料、スペインの外交史料などを収集せねばならない。中途で切り上げてあるスペイン・イタリアでの史料収集に関して、渡航できる日が近づいている感はあるものの、いまだ決行できるかが不明瞭である。今後の世界の状況を見ながら機敏に対応していきたい。移動ができるようになり、状況も後押ししてくれれば、マドリードのスペイン国立図書館にも出向きたい。それまでは、これまでに収集してきた史料や文献を最大に活用し、できる限りの出版・発表活動を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナのため、予定していた海外への出張が不可能であったため、残高が生じた。 次年度は、コロナの状況に鑑みて、可能な限り海外への出張を実施したい。
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