研究課題/領域番号 |
20K01540
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
大澤 武司 福岡大学, 人文学部, 教授 (70508978)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中華人民共和国 / 戦犯処理 / 統一戦線 / 中国国民党 / 台湾統一工作 / 寛大方針 / 改造教育 / 台湾海峡 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国の内政・外交において極めて重要な意味を持つ「統一戦線」戦略(統戦外交)という中華人民共和国(以下、中国)・中国共産党の思考・行動様式に関する実証的事例研究を行う。研究代表者は従来、基盤研究(C)「現代中国の統戦外交と戦犯処理に関する基礎研究―台湾統一・少数民族工作と寛大方針」(17K03609・研究代表者大澤武司)を進めてきたが、このうち前者の「台湾統一工作」に特化した研究として、本研究を進めている。研究初年度となった令和2年度は、2020年2月より感染拡大した新型コロナウィルスの影響により、国内外における調査・研究が全く行えず、また、大学における教育活動上の混乱も手伝い、研究活動に割けるエフォートが大幅に低下した。もっとも、従来進めてきた基礎研究を通じて調査・収集を行った関連書籍・論文の翻訳・分析作業を中心に、可能な範囲で基礎的な研究作業は継続している。
次年度(令和3年度)の状況はいまだ予測が立たないが、引き続き、CNKI(中国語文献検索データベース)などを有効に活用しつつ、最新の研究論文や中国で刊行される新たな関係者の回想録などの調査・収集を進め、基礎研究を固めていく。具体的には、文献・史資料の網羅的・体系的調査・収集、さらにこれに対する翻訳作業を進める。現時点で、国民党戦犯が収容されていたとされる中国全土に5か所あった戦犯管理所それぞれについて、その概要が判明しつつあるため、第2年目(令和3年度)は、各戦犯管理所の特徴解明に留意しながら、さらに翻訳・分析作業を進めたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響による国内外の移動制限により、史資料の調査・収集や国内外の研究者との研究交流活動に支障が出ている。もっとも、中国国内における関係図書・論文の出版・刊行は盛んであり、専門書店の支援も受けながら日本国内にいながらも積極的な文献・史資料の調査・収集を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染状況は今後も不透明であり、本年度も研究活動を行うにあたっては引き続き厳しい制約下にあると考えられる。引き続き国内外での出張、すなわち史資料調査・収集ならびに研究交流はほぼ不可能に近い状況となると考えられるが、オンライン会議システムを利用することで、本年度は戦犯処理や中台関係を専門とする中国人研究者などとの交流・意見交換を展開することを検討している。なお、当初の研究計画においては、副次的な課題と捉えていたが、中国の国民党戦犯処理政策に対する中華民国(台湾・蒋介石政権)の反応についても、新たに視野に入れ、分析が進められるよう、準備を進めたいと考えている。また、研究計画初年度の予算執行状況を踏まえ、研究期間の延長(現時点では1年間を予定)を行うことで、当初の研究計画を完遂したと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外旅費の執行不能を原因として、研究計画初年度(令和2年度)の予算執行は当初の計画よりも減少した。今年度(令和3年度)についても、引き続き特に国外出張については計画通りの予算執行が困難であると考え、新年度の研究予算請求額は「200,000円」とし、昨年度の未執行分「693,755円」と合わせて「893,755円」を執行することとした。中国の国民党戦犯処理が本研究の中心的課題であるが、重層的な分析を加えるためにも、本年度は「中台関係」に関する専門書籍や資料集も重点的に調査・収集することで、「ポストコロナ」期における研究活動を見据えた基礎研究を蓄積したい。また、現在、研究用に供する専用のパソコンがないため、本年度予算で購入を計画している。
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