研究課題/領域番号 |
20K01547
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
清水 崇 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80323468)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 組織の経済学 / 発言 / 戦略的情報伝達 / 退出 / 組織の同質性 |
研究実績の概要 |
論文「退出と発言の相互作用について」を公刊した。この論文では筆者の既存論文"Cheap Talk with an Exit Option: The Case of Discrete Action Space"、"Cheap Talk with an Exit Option: A Model of Exit and Voice"、および"A Model of Costly Voice"を統合かつ発展させる形で、「発言」と「退出」との間の相互作用を、特に「発言」の費用の種類の分類に基づいて分析した。より具体的には、部下から上司への情報伝達活動を「発言」と捉え、部下の「退出」オプションの存在が「発言」に与える影響を分析した。その結果、上司が部下の退出を恐れているときは退出が発言を促進する可能性がみられる一方、そうでない場合には、逆に退出が発言を阻害する結果も往々にして起きるということが明らかになった。
また論文"On the Cpmbination of Biased Members"を作成した。この論文では筆者の既存論文"Which Is Better for the Receiver between Senders with Like Biases and Senders with Opposing Biases? "を発展させる形で、部下の「発言」を引き出すための最適な部下の組み合わせについて分析した。より具体的には、各部下は組織の行動を組織全体の最適な水準から乖離させるバイアスを持つ状況を想定する。さらに各部下のバイアスの方向性は皆が知っているが、具体的なバイアスの大きさは各部下の指摘情報であるとする。このとき、異なったバイアスの方向性を持つ部下を組み合わせる異質的な組織よりも、全員が同じ方向のバイアスを持つ同質的な組織の方が、より効率的な「発言」を引き出すことが可能であることを示した。これは、同質的な組織では、自分の誤情報が他の同僚のの誤情報により増幅され組織全体を重大な危機に陥れる可能性を恐れ、それぞれの部下が適切な「発言」を行うよう規律付けられることに起因している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の研究成果をより深化させる形で研究が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の二つの研究の方向性を統一する研究を進め、より一般的な「発言」の機能について研究を深めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、予定していた国内外での報告の機会がなくなってしまったことが理由である。
これまで使用できなかった旅費については、各国のコロナウイルスの感染状況に応じて適宜繰り下げて使用するとともに、物品費にも振り分けて使用する予定である。
|