研究課題/領域番号 |
20K01552
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
大石 尊之 明星大学, 経済学部, 准教授 (50439220)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 反双対性 / 協力ゲーム理論 / サブゲーム完全遂行 |
研究実績の概要 |
Oishi et al. (2016, J. Math. Econ.)で提唱した協力ゲーム理論の「反双対性アプローチ」をメカニズムデザイン理論に接続して、協力ゲームの様々な解をナッシュ遂行させるメタ理論を構築するための重要な足掛かりとして、まず「協力ゲームの解をサブゲーム完全遂行する2つの戦略形ゲームが反双対である」という新しい概念を厳密に定義した。これは、もし、① 戦略形ゲームAで協力ゲームの解φをサブゲーム完全遂行できるならば、Aと異なる戦略形ゲームBでφの反双対解をサブゲーム完全遂行できる、② 逆に、戦略形ゲームBで協力ゲームの解φをサブゲーム完全遂行できるならば、Bと異なる戦略形ゲームAでφの反双対解をサブゲーム完全遂行できる、という2条件を満たすならば、協力ゲームの解φをサブゲーム完全遂行する2つの戦略形ゲームAとBは反双対であると定義される。この一般的定義の下で、Bergin and Duggan (1999, J. Econ. Theory)で導入された、特性関数のα支持性およびβ支持性の概念を利用して、特性関数をα支持する戦略形ゲームとβ支持する戦略形ゲームの2つのゲーム間での反双対性を定義できる。このようなゲームを反双対戦略的ゲームと呼ぶことにする。このとき、プレイヤーの人数が3人以上であるような凸ゲームのクラスでは、協力ゲームの任意のコア配分をサブゲーム完全遂行するような、異なる2つの反双対戦略的交渉ゲームが常に存在することが予想される。2020年度はこの主張の厳密な証明を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、研究概要で述べた研究成果の一部(Oishi, Anti-duality in resource allocation problems, unpublished results)を、国際的な学術団体Society for the Advancement of Economic TheoryのThe 20th Annual SAET Conference(2020年6月に韓国ソウルで開催予定)で大石が発表する予定であった。しかし、2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大が世界的に起きたため、学会報告は中止となり、2021年度に順延となった。また、メカニズムデザイン理論およびゲーム理論の第1人者として知られる米国ロチェスター大学のWilliam Thomson教授の研究室に訪問し、研究に関する助言を受けながら、現地で集中的に研究を進める予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大によりできなかった。そのため、活発な議論や情報交換、および情報収集が、在外研究や国際学会参加を通じて、できなかったことで、研究遂行することが、当初予定より遅くなった。現在、Anti-duality for implementation-theoretic and axiomatic analyses in economic environmentsと題する単著論文を作成中であり、この中で「プレイヤーの人数が3人以上であるような凸ゲームのクラスでは、協力ゲームの任意のコア配分をサブゲーム完全遂行するような、異なる2つの反双対戦略的交渉ゲームが常に存在する」ことの証明に使用する補助命題をいくつか準備しており、証明の完成に向けて研究を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
凸ゲームのクラスで反双対戦略的交渉ゲームが常に存在すること(以下、反双対戦略的ゲームの存在定理)が証明できたならば、次に具体的な経済学的応用を検討することが、研究推進の自然な方向性であると考えられる。例えば、純粋交換経済の市場ゲームが凸ゲームであるような市場環境の下で、競争均衡をサブゲーム完全遂行するような反双対戦略的交渉ゲームを作成できるかどうかを調べることは、重要な応用例の1つであると考えられる。上記の市場ゲームでは、競争均衡はコア配分なので、反双対戦略的ゲームの存在定理の興味深い応用例になる。また、2020年度開催が中止となった、The 20th Annual SAET Conferenceは、2021年6月にオンライン発表形式で、開催予定であり、大石がAnti-duality in resource allocation problemsという題目で報告予定である。この発表を通じて、海外研究者等の議論を通じた、研究に関する有益なフィードバックを得ることで、研究遂行を着実に進めることが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウィルスによる世界的パンデミックのために、当初発表予定であった国際学会や海外研究機関での在外研究を目的とした海外渡航がすべてできなくなったために、関連する旅費の使用ができなかった。これにより、次年度使用額が生じた。2021年度は、研究成果を論文としてまとめ、成果を広く公表できるようにするために、適切に研究費を使用していきたい。さらに、研究遂行に必要不可欠な環境整備のために、PCあるいはその周辺機器、ソフト、ならびに関連研究書籍の購入にも当該助成金を使用したいと考えている。
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