研究実績の概要 |
本年度は、譲渡可能効用の下でサイドペイメントがある協力ゲーム(以下、協力ゲーム)の解をサブゲーム完全遂行する戦略形ゲームの自己反双対性という概念を定義し、戦略形提携ゲームの解であるδコアのみをサブゲーム完全遂行する自己反双対的な戦略的交渉ゲームが存在することを証明した。Aを各エージェントの行動計画の集合、ξを非空提携のメンバーで達成できる行動計画の集合、uを効用関数組とし、(A,ξ,u)を戦略環境と呼ぶ。協力ゲームのクラスVを所与にしたとき、ある戦略環境(A,ξ,u)が存在して、Vに属する任意のvが戦略環境から生成されるα流特性関数で常に表現されるとき、その戦略環境はvをα支持するという。まず、「協力ゲームの族がα支持的であることの必要十分条件は、その族に含まれる任意のゲームが優加法的である」ことを証明した。次に、Vが反双対オペレータについて閉じているような優加法的ゲームのクラスとする。このクラスVの下で、「戦略環境(A,ξ,u)がvをα支持するような戦略的ゲームG(A,ξ,u)において、V上の自己反双対解φがサブゲーム完全均衡で達成できるときはいつでも、別の戦略環境(A’,ξ’,u’)が存在して、vの反双対ゲームをα支持するような戦略的ゲームG(A’,ξ’,u’)において、φが再びサブゲーム完全均衡で達成できるならば、戦略的ゲームGはφについて自己反双対的である」と定義する。δコアはδ改善できない配分の集合であり、δ改善は提携Sの外のエージェントたちがSの任意の行動を所与にして順応し、互いにナッシュ均衡をプレイする状況における改善を意味する。以上の準備のもとで、「エージェントの人数が3人以上でVが平衡ゲームあるいは凸ゲームのクラスであるとき、δコアをサブゲーム完全遂行する自己反双対的な戦略的交渉ゲームが常に存在する」ことを証明した。
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