研究課題/領域番号 |
20K01556
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
中川 竜一 関西大学, 経済学部, 教授 (60309614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 適応的学習 / 期待の異質性 / 均衡の安定性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「適応的学習における情報の不完全性は、サンスポット均衡のメカニズムにどのような影響を与えるか」を明らかにすることである。令和2年度は、交付申請書「研究目的 テーマⅠ」(適応的学習における情報の不完全性とサンスポット均衡の安定性(持続性)との関係)について分析すると同時に、関連研究の成果を国際経済雑誌に投稿・発表することに取り組んだ。 第1に、「研究目的 テーマⅠ」として、適応的学習における情報の不完全性とサンスポット均衡の安定性(持続性)との関係を明らかにした。具体的には、Nakagawa (2015)モデルをベースとして、情報の不完全性の存在によってサンスポット均衡が安定的(持続的)になるか否か(すなわち、「安定性パズル」が解決されるか否か)を理論的に明らかにした。これらの研究成果を国際経済雑誌(Macroeconomic Dynamics(査読付き)その他)に投稿した。 第2に、関連研究として、1980年代後半、日本の金融機関が横並び行動をとっていたことを実証的に明らかにし、金融機関の逐次的な学習行動、情報の不完全性、攪乱的景気循環の間との関係を確認した。この成果は、国際経済雑誌(International Journal of Finance、査読付き)に公刊された。 さらに、オンライン形式でアメリカ経済学会、ヨーロッパ経済学会その他に出席し、外国研究者の最新の研究成果を確認した。これらの活動を通じて、研究方法を再検討すると同時に、外国研究者と直接的に交流し、将来の共同研究について打ち合わせすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、当初の計画通り、「研究目的 テーマⅠ」(適応的学習における情報の不完全性とサンスポット均衡の安定性(持続性)との関係)についての研究論文の執筆をおこなった。しかし、コロナ禍によって行動が制限されたため、国内外の経済学会での研究発表を十分におこなうことができなかった。他方、分析作業、投稿作業に多くの時間を使ったことの効果として、関連研究の論文を国際経済雑誌に公刊することができた。また、公刊には至らなかったが、本研究における論文の投稿作業を大きく進めることができた。 そのため、「研究目的」の達成はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では、令和2年度で分析したモデルに情報構造の時間的変化を導入し、情報構造の変化がサンスポット均衡の発生・崩壊を生み出す過程を明らかにする(「研究目的 テーマⅡ」)。過去の大きな経済攪乱には、人々が経験したことのない構造変化(例:IT革命、金融技術革新)が生じた後に発生する傾向が見られる。そこで、構造ショックに対する人々の情報量の変化によってサンスポット均衡の発生・崩壊過程が生ずるか否か、現実の経済攪乱の動きと整合的であるか否かを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由は、コロナ禍によって国内外での研究発表が制限され、旅費の支出が発生しなかったからである。次年度使用額は、コロナ下の緩和が期待されるため、令和3年度の旅費に充当する予定である。
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