研究課題/領域番号 |
20K01558
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
熊野 太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00700494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マッチング理論 / 相互依存性 (interdependency) / 補完性 / 外部性 / 安定性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、非分割財の一般化と戦略的に頑健かつ効率的な配分を明らかにすることである。今年度は、多対一マッチング理論の一般化を行った。 既存のマッチング理論(労働者と企業など)では、企業のマッチしたい労働者の選択はそれぞれの企業が独立で行うことを仮定している。一方で、現実には企業の選択は、他の企業の行動に依存していることが多いし、また労働市場全体の状況にも依存している。これらは独立な企業の行動では表現できない。 Kumano and Marutani (2021) では、個別の企業に選択関数を定義するのではなく、全ての企業の選択を総じた aggregate choice function を基礎として分析を行った。解概念としては、安定性と効率性を設定した。我々は、全ての企業の選択が2つの条件を満たすとき、労働者がどのような選好をもっていたとしても安定的なマッチングが存在することを明らかにした。そしてそのようなマッチングを発見するアルゴリズムも発見した。さらに、安定的なマッチングは効率的であることを示した。本論文における環境は、既存のほぼ全てのマッチングモデルを包含し、2つの条件は既存の安定マッチングの存在条件よりも弱い。 本論文によって、これまで分析の難しかった「補完性」や「外部性」といった社会的に重要な状況を上手く分析することができるようになった。さらに、既存研究とは異なる方向性によって一般化が可能になったため、これまで以上に様々な分析が可能になる。本論文は、最も評価の高い国際雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していたよりも重要な結果を示すことができた上、それらをまとめた論文が既に完成し、投稿中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
多対一のマッチング理論の一般化に対して大きな貢献ができた。今後の方針は3つある。 1 Kumano and Marutani (2021) では安定マッチングの存在やその効率性などを明らかにしたが、一方で、戦略的性質についてはまだ議論していない。よって、戦略性を分析する。 2 多対一のマッチング理論は両サイドが意思決定主体である一方で、片側が財である問題も重要である。既存研究では財を物理的に捉えており、それ自体がモデルの限界となっているが、財を概念的に捉えた一般化を行うことは可能である。よってそのような理論の発展を行う。 3 理論的分析と同様に、実験等のデータによる確認も必要と考える。よって、実験を行うことで理論の補完またはさらなる発展を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、本研究課題で想定していた海外主張、国内出張、学会発表が全てキャンセルになったため。 今年度計画していた海外出張を可能な限り次年度に実施する。また国内出張、国内学会発表等で海外出張等の補完ができる場合はそれらに費用を充てる。
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