研究課題/領域番号 |
20K01558
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
熊野 太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00700494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Matching theory / Market design / Stability / Pareto efficiency / Strategy-proofness |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、非分割財(優先順位をもつ場合を含む)の一般化と戦略的に頑健かつ効率的な配分を明らかにすることである。今年度は、昨年度の成果である Kumano and Marutani (2021) の深化とともにマッチング環境の変化に対して戦略的に頑健かつ効率的な配分を達成する方法を模索した。 Kumano and Masutani (2021) では既存の多対一マッチングモデルから企業の独立性の仮定を外した上で安定マッチングの存在を明らかにしていた。既存の先端分析では「契約(Hatfield and Milgrom (2005))」を導入した分析が盛んである。これに対し、Kumano and Marutani (2021) を契約を含んだモデルに発展させ、既存結果よりも豊かな結果を導くことに成功した。 一方で、マッチング環境の変化に対する研究では、特に、近年の少子化に焦点を当て、少子化の学校選択に対する影響と望ましい政策について分析を行った。少子化は予算削減などの結果、既存の学校選択市場を小さくする。即ち、総定員数の減少を伴う。この際、現実では2種類の政策が世界各国の学校選択市場で採られている。(1)いくつかの学校を閉鎖、統合して総定員数を減少させる。(2)学校数は維持したまま、それぞれの定員数を減少させて総定員数を減少させる。この2種類の政策のどちらが望ましいかは未だ論争中であるが、それはある種の科学的分析が欠如しているからである。本論文では、2種類の政策を安定性、戦略的頑健性、効率性の観点から分析した。結果、(1)の政策は(2)の政策よりも常に3つの望ましい性質を満たしやすいことを明らかにした。これはマッチング理論の実践上、非常に有益な結果である。 上記2本の論文は、評価の高い国際雑誌に投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍のため国内、国際的な学術交流をもてていない一方で、共著者とは十分な交流がとれているため、本研究の主題に対して様々な角度から理論研究が進められている。その結果、当初計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策は3点ある。 1優先順位のない非分割財の分析を進める。残念なことに Ahn and Root (2020) は当初研究計画の一部と非常に似通った研究がなされている。特に想定する環境はほぼ同じであった。しかしながら結果の頑健性と一般性については本研究計画が想定するまでには至っていない。よって彼らの結果の補完になるより一般性の高い結果の導出を試みる。 2昨年度は Kumano and Marutani (2021) の結果を契約付きマッチングの環境にまで拡張することに成功した。しかしながら、既存の契約付きマッチングに関する論文との関係性が不明瞭であるため、関係性を明確化する。さらに現実環境への応用の観点から、Kumano and Marutani (2021) の条件の分解と応用可能な領域の模索を行いたい。必要に応じて経済実験を試みる可能性もある。 3昨年度の分析を嚆矢として、少子化問題とマッチング理論の分析を進める。少子化問題のマッチング環境へ与える影響は、数学的には、異なるマッチング問題の比較として総括することができる。現在のマッチング理論ではそのような、あるマッチング環境での結果と変化したマッチング環境での結果の間の関係を分析した論文はほとんど存在しない。よって、異なるマッチング環境への遷移とマッチング結果の遷移、及びその方法を、経済学的に望ましい性質の観点から分析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、当初計画していた国内出張や海外の研究機関での研究ができなかったため。また海外の研究者の招聘も困難であったため。 次年度の使用計画として、当初の該当年次の使用計画に加えて、今年度実施できなかった国外の共同研究者の招聘や、国内出張、海外出張を予定している。
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