研究課題/領域番号 |
20K01566
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松本 昭夫 中央大学, 経済学部, 教授 (50149473)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Time delay / Solow growth model / Leintief function / Continuous time dynamics / CES production function / Stability switch / Cournot duopoly / Asymmetric contest game |
研究実績の概要 |
1部門Solow モデルを遅延二部門経済成長モデルに拡張し検討し、1部門分析との安定条件の比較を試みる。 (i) まず各部門がLeontief型の生産関数を持つ場合の動学の分析を考察する。Furuno [1965, IER]は、生産遅延がある場合には不安定領域が拡大することを示している。Furunoの古典的な分析方法を近年開発されたシステマティックな方法に置き換え、安定・不安定条件の導出を行う。 (ii) 次いで労働と資本の代替に主眼を置く新古典派モデルに遅延を導入した場合に、いかなる効果をもたらすかの問題について検討を加える。特に遅延を含まない2部門モデルの安定の十分条件である「資本集約度条件」や「生産の代替の弾力性条件」がどのように影響を受けるかを中心に分析を行う。まずは、Leonfief型生産関数を新古典派型生産関数に置き換えた場合を考察する。ついで、CES生産関数を導入した時の効果を分析する。Delayを導入することにより、周期解をふくむ様々な動学が現れる条件を明示的に求める。 (iii) 離散時間クールノー複占モデルを連続時間モデルで置き換え、さらに遅延を導入する。離散時間モデルでは非線形性がつい場合にはカオスを含む複雑な動学が生まれるが、連続時間モデルは安定化することは知られているが、遅延は連続時間モデルの複雑動学の源泉になりうることを示す。さらに非対称的なコンテストゲームの動学化を考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要(i)に関しては Delay two-sector growth model with constant technological coefficients としてまとめ、専門雑誌に投稿中である。 概要(ii)に関しては Delay two-sector growth model with a Cobb-Douglas production functionとしてまとめ、Decision in Economics and Financeに投稿、採択され既にonlineに掲載されている。さらにCobb-Douglass型生産関数をCES関数に置き換えた場合も Delay Solow model with a normalized CES production function としてまとめることができ、現在投稿雑誌を選定中である。。 概要(iii)について以下の論文が採択された。Delay Cournot duopoly game with gradient adjustment: Brezowski transition from a discrete model to a continuous model (doi:10.3990/math8091615). Stability of dynamic contests with endogenous prices. Stability switching curves in a Lotka-Volterra competition system with two delays. 理論生物学の基本モデルであるLotka-Volterra競争モデルにdelayを導入すると複雑な動学がうまれることは数値的に確かめられていたが、遅延微分方程式の応用として、理論分析を行い、数値分析を補完した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は当初の計画通りに主にミクロ経済動学モデルに遅延を導入し、その動学に関する影響の分析を試みる。主に、不完全競争市場における価格や数量などのミクロ変数に時間遅延が存在する場合の動学モデルを構築する。ミクロ経済動学の分野では遅延を取り扱う業績は多くないが、各企業が独自の時間遅延に直面しているHowroyd/Russel(1984, JME)の N-企業Cournotモデルは N 種の異なる遅延がある状況で、定常点の安定性の十分条件を導き出している。このHRモデルの再考察を行う。同論文の毒手ケースに相当する2財に限った場合はすでにDelay Cournot duopoly model revisited, Chaos (American Institute of Physics Publishing,2018)において考察され、安定の為の必要十分条件を導出している。これをメルクマールとし、自己の経済活動に関する遅延 (implementation delay)と競争企業の経済活動に関する情報収集での遅延 (information delay)の二種類の遅延がある場合の一般的な N 企業市場の安定性の必要・十分条件を導出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により参加予定のすべての国内、国際学会、研究集会が中止になり旅費、人件費等の支出を行わなかった。PCを購入予定であったが、他の研究費により購入ができたので、今年度は科研費による購入を行わなかった。 2021年度はいくつかの国際学会、および国内学会において報告を予定しているが、COVID-19の影響によりon-line集会になる可能性もあり、計画は不確定である。
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