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2020 年度 実施状況報告書

人口高齢化と経済成長

研究課題

研究課題/領域番号 20K01569
研究機関関西学院大学

研究代表者

田畑 顕  関西学院大学, 経済学部, 教授 (20362634)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード人口の高齢化 / 研究開発投資 / 国際貿易
研究実績の概要

Dinopoulous and Segerstrom (American Economic Review 1999)により提示された「異なる世代の個人から構成される代表的家計」を、2国貿易モデルに導入し、人口の高齢化に伴う労働力人口比率の低下が経済成長率に及ぼす影響について理論的な分析を行った。人口の高齢化は労働力人口比率の低下を通じ、各国の労働供給量の縮小を招く。国際間の知識、技術の波及が不完全な場合、相対的に労働供給量が多い国ほど、より多くの生産性の高い企業が立地する。そのため人口の高齢化に伴う労働供給量の縮小は各国の相対的な企業シェアや生産性に負の影響を及ぼす。
こうした枠組みの下で、(1). 相対的な労働供給量の少ない小国での高齢化は、国際間の知識、技術の波及を円滑化し、経済成長を促進するものの、参入企業数は低下すること、(2). 相対的な労働供給量の多い大国での高齢化は、国際間の知識、技術の波及を妨げ、経済成長を減少させるものの、参入企業数に与える影響は解析的にはっきりしないこと、(3). 各国の引退年齢延長政策が人口の高齢化の影響を緩和する効果を持つこと、などを明らかにした。また、アメリカや西ヨーロッパ諸国の人口データを用い、人口高齢化の進展や引退年齢延長政策が各国の経済厚生に及ぼす影響について数値シミュレーション分析を実施した。
これらの成果はDiscussion Paper "Demographic Structure, Knowledge Diffusion, and Endogenous Productivity Growth " (ISER Discussion Paper 1113, Institute of Social and Economic Research, Osaka University)としてまとめられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究実施計画では、Dinopoulous and Segerstrom (American Economic Review 1999)により提示された「異なる世代の個人から構成される代表的家計」の枠組みを利用し、人口の高齢化が「家計の教育選択」と「企業の研究開発投資」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルを構築すること、およびその理論結果の妥当性について数量的に検証すること、などを本年度中達成すべき課題として挙げていた。しかし、家計の教育選択を取り入れた理論モデルの解析的な取り扱いが難しいこともあり、人口の高齢化が経済成長に及ぼす2つの相反する影響(市場規模の縮小による研究開発投資の減少、長寿化による教育投資の増加)を明示的に取り入れたモデルを構築し、興味深くかつ明確な理論的含意を導くことはできなかった。
しかし一方で、2国貿易モデルの枠組みを利用することで、人口の高齢化が国際間の知識、技術の波及、企業の参入、立地選択を通じ、経済成長や経済厚生に及ぼす影響について分析する理論モデルの構築には成功し、これらの成果をDiscussion paperとしてまとめた。
以上、当初の実施計画とは異なるものの、既存研究では分析されていない要因に着目し、「人口の高齢化」と「経済成長」の関係という重要な学術的な「問い」に答えるために有用な経済成長モデルの構築には成功しており、その点についてはある程度評価できると考えている。しかし当初計画した人口の高齢化が「家計の教育選択」と「企業の研究開発投資」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築には成功しておらず、さらなる検討の余地が残る。その意味では、現在までの達成度は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。

今後の研究の推進方策

令和3年度は当初の予定通り、(1) 人口の高齢化が「プロダクト・イノベーション(新製品の開発投資)」と「プロセス・イノベーション(既存製品の品質改善投資)」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築、(2). (1)の理論モデルから得られる結果の妥当性についての数量的検証、といった作業に取り組んでいく。
具体的には「プロダクト・イノベーション(新製品の開発投資)」と「プロセス・イノベーション(既存製品の品質改善投資)」の両方を考慮したR&D型経済成長モデルに連続時間世代重複モデルの枠組みを導入し、人口の高齢化が経済成長率に及ぼす影響について分析を行う。加えて、1年目に成果をまとめることができなかった、人口の高齢化が「家計の教育選択」と「企業の研究開発投資」の相互作用を通じて、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築にも引き続き取り組んでいく。
また、こうした理論分析に基づく数値シミュレーション分析や実証研究のために必要なデータベースの作成などにも取り組む。以上、令和3年度はできうる範囲で、当初の研究計画に沿って研究を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

論文執筆作業が進まなかったため、英文校正費の支出予定分の一部を次年度に繰り越すこととなった。
翌年度に持ち越すことになった26,988円については英文校正費に割り当てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] Demographic Structure, Knowledge Diffusion, and Endogenous Productivity Growth2020

    • 著者名/発表者名
      Colin Davis, Ken-ichi Hashimoto, Ken Tabata
    • 雑誌名

      ISER Discussion Paper, Institute of Social and Economic Research, Osaka University

      巻: 1113 ページ: 1-43

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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