研究課題/領域番号 |
20K01574
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福澤 直樹 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (10242801)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オルドリベラリズム / ネオリベラリズム / 新自由主義 / ドイツ / 社会国家 / 秩序経済学 / 経済秩序 / 経済思想 |
研究実績の概要 |
令和3年度においては引き続き、社会国家概念の基盤となってきた経済秩序や思想と現実政策との連関についての検討を行った。これに関連した研究を従前よりフライブルク大学の研究グループと共同で進めてきたが、令和3年4月にオンラインで共同ワークショップ How Traditions of Economic Thinking Shape Economic Policiesを組織・開催し、自身も報告 “The Effects of Economic Thought on Politics in West Germany after WWII: With a Comparison to the Case of Japanese Liberalist Tanzan Ishibashi“ を行った。ここでの諸報告を編集し、『経済科学』(名古屋大学)の特別号とし刊行し、自身としても総括の共著論文並びに単著論文を公刊した。 また本研究課題に密接に接続する福祉社会研究フォーラム(政治経済学・経済史学会)における研究活動にもオンラインで積極的にコミットし、研究内容のレビューを受ける乃至専門知識の提供を行うなどしつつ、共著書の刊行に向けての活動も行ってきた。さらに既存の研究資料、オンラインで入手可能な資料・論文、本邦で内容確認・郵送入手可能な二次文献(書物)を参照しつつ、でき得る限り上記研究課題の進捗(「関連性」の解明)に努める一方、本研究課題のもう一つの柱である、秩序経済学の有意性の検討についても、当該文献を読み進めつつ、その整理・分析を行ってきた。さらには、ドイツ国内での資料・文献調査を現実に行うことができなくとも、それが可能になった際に円滑かつ効率的な作業が行えるよう、資料の所在や概要についての予備的な調査を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度に引き続き、令和3年度も新型コロナウイルスの蔓延により、国内出張、海外出張ともに一切行うことができなかった。オンラインでの研究打ち合わせや情報交換、研究内容の相互レビューを積極的に実施し、オンライン研究集会を主催、また国際研究集会などにも参加してきたが、歴史研究にとって不可欠な一次資料、本邦で入手不可能ないし内容確認のできない文献の収集や、当該課題についての本格的な議論ができないため、既存資料や二次文献の批判的検討などを中心とした研究などに、活動の範囲・次元が制約されてきた。 また依然としてコロナ禍が収まらず長期化する中、個々の学生の置かれた状況も多様となり、単なる遠隔授業や、オンディマンド授業の実施ないし教材の作成のみならず、対面授業と遠隔授業を同時に進行させつつ、個々の学生のニーズにできる限り対応するという新たな責務が課せられるようになった。そのためこれらに対する準備及び対応に多くの時間がとられることになった。この他、令和3年度は、勤務校外の学術コミュニティーにおける種々の役割に対し例年にない大きなエフォートが割かれた年であったことも付言しておく。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に入ってなおコロナ禍は鎮静化してはいないが、国内の行き来は基本的に可能であり、下半期の研究集会は対面実施の方針で計画が始められている。海外においても交通制約は概ね解除される方向にあり、海外出張ないし滞在も可能になってくるものと期待される。 本年度下半期からは、協力関係にある内外の研究者らとの直接交流を再開し、情報収集や相互レビューを行いつつ、部分的な研究成果の発信に努めていく。これを通じて本研究課題の論点整理や、実証面での課題の明確化を進め、これまで滞ってきたドイツでの資料調査や文献調査・収集をより効率的・集中的に行っていく意向である。 オルドリベラリズム、ひいては古典的ネオリベラリズムの拠点であるフライブルク大学との従前からの研究協力も継続し、状況が許せば共同研究集会を組織する所存である。また今年度は前年度のように社会活動が集中する予定もなく、効率的に研究活動に専念できるものと期待している。上記のように、研究計画全体としては若干の遅れが出てはいるものの、本課題において当初計画された研究成果に向けて、着実に分析を進めていきたいと考えている。 なお令和4年度には、いわゆる「古典的」ネオリベラリズムに関して、政治経済学・経済史学会の秋季学術大会で報告することを期し、(ドイツ現地での新たな資料調査の成果をこの時点で活かすことはできないが、)すでに具体的な準備に入っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じたもっとも大きな理由は、海外および国内の出張旅費(交通費および海外の現地滞在費)が本研究課題開始年度以降、一度も執行できていないことである。一次資料を新たに収集できないため、それに付随する費用や、それを整理するに際しての作業を依頼するべき雇用も発生してこなかった。また一次資料に準じる文献収集も思い通りにいかず、関連著作は購入しているものの、その範囲も限定的となっている。よって備品費等も思うように執行できていない。 コロナ禍のもと、研究の遅れとともに、かなりの未使用分が生じているのが現状だが、前述のように、国内はもとより、海外においても交通制約は概ね解除される方向にあり、海外出張ないし滞在も可能になってくるものと期待される。なるべく効率的に作業をすすめるよう十分な準備をしていくが、今年度はある程度の期間、ドイツに滞在し、資料・文献についての調査・収集を行い、また海外研究者とのコンタクトや研究集会への出席も積極的に行っていく予定である。これら諸活動に伴う交通費・滞在費や、資料・文献収集に係る費用、二次文献のさらなる調達、資料等の整理のための人件費などに、残余の予算を充当する計画である。
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