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2020 年度 実施状況報告書

社会的共通資本とコモンズの経済思想

研究課題

研究課題/領域番号 20K01578
研究機関大阪市立大学

研究代表者

若森 みどり  大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20347264)

研究分担者 斉藤 尚  北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (20612831)
橋本 努  北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40281779)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードコモンズ / 宇沢博文 / 社会的共通資本
研究実績の概要

本研究プロジェクトの初年度となった2020年度は、様々な分野で興隆している近年のコモンズ論を収集する作業を行いつつ、それらを総合的に検討して個別の議論において引き出される多様な規範的含意を評価するための理論枠組みを学術的に検討する知的資源として、以下の2点に照明を当て、4回の研究会をオンライン開催で行った。
第一は、日本の経済思想の貢献、とりわけヴェブレンの制度主義の経済思想やデューイのプラグマティズムの哲学を一部継承し社会的共通資本の思想を築いた、宇沢弘文の貢献に学ぶことである。
2020年度は宇沢弘文の経済思想に関する2回の研究会をオンライン形式で開催した。宇沢弘文の社会的共通資本の理論は近年、内外で注目されている点を踏まえつつ、社会的共通資本という概念がどのように生まれ発展してきたのかという、その思想形成に取り組んだ。この過程で、思想史研究やアーカイブズ研究によって明らかにすべき課題が山積していることを認識した。
第二については、コモンズ論に関心を持つ若手の二人の研究協力者を迎えて、海外のコモンズに関する近年の議論を収集し情報の共有を行う一環として、2回の研究会をオンライン形式で開催した。
持続可能な世界のための実践としての「コモニング」という行為や、ある対象を「私有財」でもなく「公共財」でもなく「コモン」として考えるという方法によって、通常の市場交換によっては捉えられない経済倫理や様々な実証研究、フィールド研究、気候問題や食糧問題などの、新たな枠組みが与えられることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究プロジェクトの初年度である2020年度は、コロナ禍での教育対応を研究代表者分担者も試行した一年であったが、その試行を糧にしながら、例えば出張できない代わりにオンラインで研究会を開催するなど、研究活動についても創意工夫をし、代表者と分担者、それぞれの研究背景を活かして、共同研究を行うことができたといえる。実証研究、フィールド研究、研究動向を確認するとともに、研究活動をおいて様々な分野で興隆している近年のコモンズ論を収集する作業を行いつつ、それらを総合的に検討して個別の議論において引き出される多様な規範的含意を評価するための理論枠組みを学術的に検討する知的資源として、4回の研究会をオンライン開催で行った。
2020年度は、宇沢弘文の社会的共通資本に関して2回の研究会をオンライン形式で開催した。そのなかで、社会的共通資本という概念がいつどのように生まれ展開してきたのかなどの宇沢の経済思想形成の解明が始まったばかりであることを認識した。とりわけ、公共財と社会的共通資本の概念の違いや、宇沢の「リベラリズム」の内容などについてはアーカイブズ研究や制度主義研究を深めて今後も継続すべきき課題であることを確認した。
海外のコモンズに関する近年の議論を収集し情報の共有を行うためにオンライン形式で研究会を2回開催した。気候問題や食糧問題などの解決を目指す近年の実証研究の展開を確認すると同時に、通常の市場交換によっては捉えられない経済倫理、およびある対象を私有財でもなく公共財でもない「コモンズ」として議論する一般的枠組みの研究がまだ始まったばかりである点について、認識を共有した。また、「故郷」「郷土愛」「環境保全運動」などの歴史社会学的な観点を踏まえてコモンズについて考察する機会を設定したが、歴史的なアプローチによって社会的共通資本やコモンズの研究を深め展開させる意義についても共有した。

今後の研究の推進方策

本研究プロジェクトの二年目である2021年度も、コロナ禍での出張制約のため、宇沢国際学館を訪問しアーカイブ研究を進めるなど、対面での共同研究を行うことは難しいと考えている。感染状況が落ち着くまではオンラインでの研究打ち合わせや研究会の開催を行い、研究活動を継続する。
2020年度に引き続き、内外のコモンズに関する近年の議論を収集し情報の共有を行う。宇沢弘文の社会的共通資本の思想史研究を継続して展開する。これに関連してアメリカ制度学派やプラグマティズムの研究についても知見を深める。2020年度に参加した二人の若手の研究協力者(人類学専攻、歴史社会学専攻)に加えて、幸福や健康の観点からコモンズに関心のある研究者を新たに研究協力者として迎え、研究の内実を豊かにしていく。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ・パンデミックの状況下で、研究活動はすべてオンライン形式で開催することを余儀なくされたため。予定されていた対面での研究打ち合わせや研究会の開催、招待講演の支払い、ならびに宇沢国際学館(東京)への訪問やアーカイブズ研究などを実施することができなかった。

  • 研究成果

    (27件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (10件)

  • [雑誌論文] ケネス・アローにおける思想的変遷:社会選択の規範的含意という観点から2021

    • 著者名/発表者名
      斉藤尚・岸見太一
    • 雑誌名

      テキストマイニングから読み解く経済学史

      巻: ― ページ: 211-228頁

  • [雑誌論文] Non-welfaristic Features of Kenneth Arrow’s Idea of Justice2021

    • 著者名/発表者名
      Nao Saito
    • 雑誌名

      Welfare Theory, Public Action, and Ethical Values: Revisiting the History of Welfare Economics

      巻: ― ページ: 256-276

  • [雑誌論文] 持続可能な世界のための消費実践:海洋プラスチック問題の現状と対策2021

    • 著者名/発表者名
      斉藤尚
    • 雑誌名

      ロスト欲望社会

      巻: ― ページ: 175-200頁

  • [雑誌論文] 塩野谷祐一の経済倫理学の再検討―人民投票型民主主義と討議民主主義の統合の試みをめぐって2021

    • 著者名/発表者名
      斉藤尚
    • 雑誌名

      社会思想史研究

      巻: ― ページ: ―

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 書評 山田広昭著 『可能なるアナキズムーマルセル・モースと贈与のモラル』インスクリプト2021

    • 著者名/発表者名
      若森みどり
    • 雑誌名

      図書新聞

      巻: 3483号 ページ: 1面

  • [雑誌論文] 経済人類学と人類史2021

    • 著者名/発表者名
      若森みどり
    • 雑誌名

      社会経済史学辞典

      巻: ― ページ: ―

  • [雑誌論文] カール・ポランニー2021

    • 著者名/発表者名
      若森みどり
    • 雑誌名

      中欧・東欧文化事典

      巻: ― ページ: ―

  • [雑誌論文] カフェテリアをデザインする2020

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 雑誌名

      ナッジ!? 自由でおせっかいなリバタリアン・パターナリズム

      巻: ― ページ: 151-173頁

  • [雑誌論文] 資本主義の精神とは何か――ウェーバー「プロ倫」の読み方2020

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 12月号 ページ: 18-27頁

  • [雑誌論文] カール・ポランニー2020

    • 著者名/発表者名
      若森みどり
    • 雑誌名

      ドイツ文化辞典

      巻: ― ページ: 2頁分

  • [雑誌論文] カール・ポランニー2020

    • 著者名/発表者名
      若森みどり
    • 雑誌名

      ドイツ哲学・思想事典

      巻: ― ページ: ―

  • [学会発表] 新型コロナウイルスとナッジ政策 人の行動を促す仕掛け2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 学会等名
      札幌「道新ホール」UHB大学一般教養講座(公開講座)
    • 招待講演
  • [学会発表] 宇沢弘文 再訪2021

    • 著者名/発表者名
      若森みどり
    • 学会等名
      立命館大学「人の資本主義」第13回カンファレンス
  • [学会発表] 消費社会はどこへ向かっているのか──欲望消費社会を超えて2020

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 学会等名
      経済社会学会第56回全国大会
  • [学会発表] ケネス・アローにおける市場の限界と市民社会論2020

    • 著者名/発表者名
      斉藤尚
    • 学会等名
      第69回経済思想研究会・第4回ケインズ学会東北部会
  • [学会発表] 塩野谷祐一の経済倫理学におけるリーダーシップ2020

    • 著者名/発表者名
      斉藤尚
    • 学会等名
      経済学史学会北海道部会
  • [学会発表] 資本主義と外部性―制度主義から考える2020

    • 著者名/発表者名
      若森みどり
    • 学会等名
      立命館大学「人の資本主義」第10回カンファレンス
  • [図書] 自由原理 来るべき福祉国家の理念2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 総ページ数
      334頁
    • 出版者
      岩波書店
  • [図書] テキストマイニングから読み解く経済学史2021

    • 著者名/発表者名
      小峯敦
    • 総ページ数
      ―
    • 出版者
      ナカニシヤ出版
  • [図書] Welfare Theory, Public Action, and Ethical Values: Revisiting the History of Welfare Economics2021

    • 著者名/発表者名
      Roger E. Backhouse, Antoinette Baujard, Tamotsu Nishizawa (eds.)
    • 総ページ数
      ―
    • 出版者
      Cambridge University Press
  • [図書] ロスト欲望社会2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 総ページ数
      ―
    • 出版者
      勁草書房
  • [図書] 社会経済史学辞典2021

    • 著者名/発表者名
      社会経済史学会編
    • 総ページ数
      ―
    • 出版者
      丸善出版
  • [図書] 中欧・東欧文化辞典2021

    • 著者名/発表者名
      共著
    • 総ページ数
      ―
    • 出版者
      丸善出版
  • [図書] ナッジ!? 自由でおせっかいなリバタリアン・パターナリズム2020

    • 著者名/発表者名
      那須耕介・橋本努編
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      勁草書房
  • [図書] ナッジ! したいですか? されたいですか? される側の感情、する側の勘定2020

    • 著者名/発表者名
      那須耕介/橋本努/吉良貴之/瑞慶山広大
    • 総ページ数
      ―
    • 出版者
      勁草書房
    • ISBN
      978-4-326-99955-2
  • [図書] ドイツ文化辞典2020

    • 著者名/発表者名
      共著
    • 総ページ数
      ―
    • 出版者
      丸善出版
  • [図書] ドイツ哲学・思想事典2020

    • 著者名/発表者名
      共著
    • 総ページ数
      ―
    • 出版者
      ミネルヴァ書房

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公開日: 2021-12-27  

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