研究課題/領域番号 |
20K01580
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
原 伸子 法政大学, 経済学部, 教授 (00136417)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジェンダー / 労働者階級家族 / 子ども / 男性稼ぎ主家族 / シングルマザー |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績は以下のとおりである。 ①国際会議報告(単独)(学習院大学、ロンドン大学、マンチェスター大学、ニューキャッスル大学共同開催、“Culture, Class, Connection”,2021年9月24日)にて、“Dual Deregulation of Labour and Childcare and Gender Equality in Japan”を報告した。この国際会議は、現代における不平等・格差を検討するシンポジウムである。私は、ジェンダー平等の観点から、福祉国家の試金石としてのシングルマザーの貧困を、労働市場の非正規化と保育の市場化という二つの規制緩和との関連で検討した。 ②共訳、ジェーン・ハンフリーズ著『イギリス産業革命期の子どもと労働-労働者の自伝から』(全598頁、法政大学出版局、2022年2月14日刊行)(全11章のうち、日本語版への序文、序章、第1章、第2章、第3章、訳者あとがきを担当)。共訳者は、山本千映(大阪大学)、赤木誠(松山大学)、齊藤健太郎(京都産業大学)、永島剛(専修大学)。 本書は子どもの労働とその家族が、イギリスにおける産業革命に果たした役割を明らかにしたものである。本書の重要な論点の一つは、18世紀後半においてすでに、男性稼ぎ主家族が成立していたことである。つまり、男性稼ぎ主家族における男女役割分業は、近代的な資本主義経済の蓄積構造に組み込まれたものとして、近代初期に成立していた。従来のフェミニストに多くみられるような、19世紀末の労働組合における女性労働の排除の動きや女性と子どもの労働に関する保護立法によって男性稼ぎ主家族が成立したという見解は、本書にもとづくならば理論的にも歴史的にも再検討される必要があるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 2020年度に引き続き、コロナ禍のために当初予定していたイギリスへの一次文献調査や、ドイツへのインタビュー調査などを実施することはできなかった。この計画はできれば2022年度後半に実施できればと思う。 しかし、2021年9月における、イギリスの大学との国際会議で報告できたことは、歴史研究を踏まえた現状分析としての日本におけるジェンダー格差の問題を社会的に発信できたとともに、海外の研究者と共通の問題を議論する機会を得ることができた。それは、貴重な成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究は、昨年度に引き続き、産業革命期の子どもの労働と家族に焦点をあてる歴史研究が中心であった。コロナ禍は依然として明確な収束の形を描くことができないけれども、2022年度後半には海外調査を実施したいと考えている。今年度の具体的計画は以下のとおりである。 ①2022年度後半にイギリスにおける一次文献調査を行うこと。 ②2020年度と2021年度の研究成果を、英語論文にまとめて社会的に発信すること(Feminist EconomicsとCambridge Journal of Economicsに投稿する)。 ③2023年度刊行予定の、共編著『経済学者たちの女性論』(昭和堂)の論文を執筆すること。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度未使用額は2022円であり、年度末までに全額使用できなかったためである。
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