研究課題/領域番号 |
20K01582
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
中野 聡子 明治学院大学, 経済学部, 教授 (20245624)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エッジワースボックス / エッジワース / エッジワースの極限定理 / ジェヴォンズ / 場の理論 / 競争概念 / 数理心理学 / 制度設計 |
研究実績の概要 |
次の4点の研究を行ない進行中である。 1.論文 “Why didn't Edgeworth draw an Edgeworth box?:‘The field of competition’ conceived by Edgeworth as an analogy of ‘Field’ in physics”の執筆中である。エッジワースが、いわゆるボックスダイアグラムを描かなかったのは、「競争の場」というこれまで見過ごされてきた独自の競争概念を展開する狙いがあったためであることを示す。「競争の場」という概念は、物理学の「場」という概念のアナロジーである。「競争の場」は、不完全な競争状態が完全競争均衡に収束する視点を有しているだけでなく、戦略的相互依存のあるケースにおいて均衡がサイクル、ジャンプするなどの挙動も視野に入れる。さらに、「競争の場」が発散する場合には、「戦争」という破壊的な状況を含む視点ともなっており、市場を支える制度を含意する競争概念となりうる。 2.『数理心理学』Mathematical Psychics の翻訳 ほぼ全訳、ギリシア語の表現、注、数式の解説および解題を準備中である。 3.「経済思想」をテーマとする教科書を執筆中である。。従来の通史ではなく、A.スミスやJ.M.ケインズ経済学の古典に回帰しながら、エッジワースを端緒とするゲーム理論の視点、メカニズムデザインの視点、統計手法等などの現代経済学の内容および意義を、経済思想として理解するための道案内を初学者向けに準備している。 4.エッジワース、ジェヴォンズの文献目録の整理を行い、エッジワースについてはこれまで未収録のものも含め整備した。またジェヴォンズの初期の科学論文も含め整理、入手し整備が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『数理心理学』Mathematical Psychics の翻訳が比較的進展したので、そこから「競争の場」という概念の重要性を発見するのにつながった。ただ、コロナ禍において、海外との交流の進展は遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
1.論文 “Why didn't Edgeworth draw an Edgeworth box?:‘The field of competition’ conceived by Edgeworth as an analogy of ‘Field’ in physics”の論文では、アナロジーとしての「場」の概念がエッジワースの競争概念に独自性をもたらしていることを示している。が、今後、アナロジーとしてだけでなく、ラグランジュの解析手法が実質的にエッジワースの分析に独自性をもたらしているかどうかを検討する予定である。 2.『数理心理学』Mathematical Psychics の翻訳 ほぼ全訳、ギリシア語の表現、注、数式の解説および解題を準備中であるので、完成を目指す。 3.「経済思想」をテーマとする教科書を仕上げる予定である。 4.エッジワース、ジェヴォンズの文献目録の整理を行ったので、マーシャルの文献目録についても整備を行い、限界革命期、19世紀の後半イギリスの文献の再整備を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国際学会等の参加ができず、旅費の支出が延期された。また、文献目録の整備についても、オンラインの作業に終始した。そのため、旅費および文献整備のためのアルバイト補助等に使用する予定である。
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