研究実績の概要 |
本年度は主に基礎的な部分を中心に研究を進めた。第一にネオ・リベラリズム自体の検討を行った。具体的には、ネオ・リベラリズム及びその政策の概要と役割と、さらに金融(化)との関係を中心にサーベイを行った。また、政策の思想的背景に関してもサーベイを行い、実際の政策との関係を考察した。第二に金融化に関する文献のサーベイを行った。さらに金融化論の枠組にネオ・リベラリズム政策を明確に位置付けたために、両者の関係についても考察した。成果としては、第一に、現代貨幣理論における貨幣の役割に関する論文を発表した(“Nominality of Money: Theory of Credit Money and Chartalism”, 2020, Review of Keynesian Studies, Vol.2.)。そこでは、応用としてEUにおける通貨統合に対する批判と緊縮財政批判及び雇用保証政策についても取り上げ、ネオ・リベラリズム的政策への批判も展開した。第二に、『MMTは何が間違いなのか? 進歩主義的なマクロ経済政策の可能性』(G. A. エプシュタイン著、共訳、2020年、東洋経済新報社)の翻訳の一部を担当し、訳者解説の一部を執筆した。訳者解説では内生的貨幣供給論とMMTの理論的関係を検討した。第三に、「貨幣の名目性:表券主義の貨幣理論」(第24回進化経済学会大会、2020年5月)という報告を行った。第四に、「MMTの可能性について」(東京経済大学創立120周年記念シンポジウム「現代貨幣理論とコロナ危機」、2021年1月)という報告を行った。第五に、ネオ・リベラリズムに関する基本的な考察を展開する内容の原稿を作成した。
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