研究課題/領域番号 |
20K01586
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下津 克己 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50547510)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 識別 / 内生的二値説明変数 / 操作変数 / 共変量 |
研究実績の概要 |
経済学の実証研究において、二値説明変数が誤分類されて記録されることは、自己申告による学歴や、自己申告による職業訓練への参加などでしばしば見られる。例えば、Black et al. (2013, Journal of the American Statistical Association)の調査では、アメリカの1990年国勢調査で専門職学位を所持していると報告した人の66%だけが本当に専門職学位を持っていることが明らかとなった。 本研究は、内生的な二値説明変数が誤分類されている計量経済モデルにおける識別問題と推定問題を研究する。特に、操作変数が内生的二値説明変数の測定誤差と相関しているモデルを、共変量を利用して識別する可能性を追求する。 既存研究は、内生的な二値説明変数が誤分類されているモデルを、二値説明変数の測定誤差から独立である操作変数を用いて識別している。これらの研究では、操作変数は外生性と二値説明変数の測定誤差から独立という二つの除外制約を満たす必要がある。 しかしながら、実証研究においては、これらの除外制約を満たす操作変数を見つけることは容易ではない。特に、内生的な二値説明変数が自己申告された変数である場合には、虚偽の申告を行う動機が操作変数の影響を受ける可能性があるため、操作変数と二値説明変数の測定誤差が相関する可能性がある。 本研究は2020年度に、内生的二値説明変数が誤分類されている計量経済モデルを、 一つの二値操作変数と一つの二値共変量を用いてノンパラメトリックに識別できることを証明した。本年度は、実際の実証研究で利用されたデータを用いて、2020年度に証明されたノンパラメトリック識別法を実際のモデルにおいてどのように適用するか、特にどのような操作変数と共変量を使うことが可能であるかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、2020年度に証明されたノンパラメトリック識別法を、実際の実証研究で利用されたデータを用いて、実際のモデルにおいてどのように適用するか、特にどのような操作変数と共変量を使うことが可能であるかを検討した。 特に、Supplemental Nutrition Assistance Program (SNAP)(アメリカにおける生活保護プログラム)のデータにおいては、性別はSNAPの受給の申告の虚偽とは無相関であるが、SNAPの受給自体やBIMなどの健康指標とは相関があるため、性別がSNAPの健康指標への影響を識別する際の共変量として使用可能であることが明らかとなった。 さらに、国際的なパネルデータであるSurvey of Health, Ageing and Retirement in Europe (SHARE)では、性別・年齢は教育水準の誤申告と無相関であるため共変量として利用可能であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年度にノンパラメトリックに識別可能であることが証明されたモデルをノンパラメトリックに推定するアルゴリズムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルスの影響により、参加予定であった国際学会に参加することが不可能となったため、未使用の旅費が生じた。当該助成金は、新型コロナウイルスの感染が収束し、国際学会への参加が可能となり次第、国際学会への参加のための旅費として使用する予定である。
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