研究実績の概要 |
本研究は経済時系列への統計的な逐次解析の手法を使った方法を開発し解析を行なうことである。通常の統計解析ではすでに得られたデータをもとに統計的な解析を行なうが、逐次解析では次々とデータが入ってくる状況でできるだけ速く、正確な統計的な決定を行なうことを目的とする。経済時系列への逐字的な統計手法の導入によって早期の金融バブルの検出が可能になることが期待できる。 まずAR(1)過程が単位根を持つかどうかの逐次検定を開発し、帰無仮説、局所対立仮説のもとでの検定量と停止時刻の同時分布を導出した。逐次検定の文献では推定量又は検定統計量の分布のみを導出しているものがほとんどであり、検定統計量と停止時刻の同時分布の導出は大きな貢献であると考えられる。その後その結果をAR(P)過程に拡張した。 この研究の過程で離散時系列を局所対立仮定のもとで拡散近似を使って連続過程で近似をしてフィッシャー情報行列が二次変分で表せることを使ってDambis,Dubins&Schwaruzの定理を使って時間変更を行って、逐次検定量の分布を求める手法を確立したことも貢献だと考えられる。統計的逐次解析では連続過程への近似を使った研究は少なく、この近似を使うことで確率積分やSkorohodの表現定理を使うことの有効性を示せた。また、逐次t検定が停止時以下のサンプル数を使う検定の中で最強力検定になることも示すことができた。 この研究の結果は 2023年4月に出版された"Advances in Econometrics, vol45A" の第4章として出版された。
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