研究課題/領域番号 |
20K01594
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藪 友良 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (90463819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 単位根 / 非線形トレンド / 三角関数 / 連続 / 緊急事態宣言 / コロナ |
研究実績の概要 |
Perron, Shintani, and Yabu(2017)の結果を拡張し、非線形トレンドの有無を検定するための手法を新たに開発した。具体的には、三角関数の周波数が複数あり、その数が未知であるとき、単位根の有無に頑健な非線形トレンドの検定を開発している。また、先行研究では、周波数は離散的としていたが、周波数が連続であるときの対処法についても考察している。現在、理論やsimulationの結果をまとめており、年内には論文として公表する予定である。 新型コロナウイルスの感染拡大に対して、政府は緊急事態宣言を含む施策を行った。そこで、日本政府の施策がどのようなメカニズムで国民の行動変容を引き起こしたかを検討した。各施策の開始と終了のタイミングが各県で異なることを利用し、各施策が行動変容を引き起こすチャネルとして、(1) 国民が政府からの要請に従い外出を抑制する効果(2) 国民が政府の施策のアナウンスメント等をもとに感染状況に関する認識を更新した結果、自発的に外出を抑制する効果、の2つを識別した。主要な発見は以下の通りである。第1 に,感染拡大に伴い国民の外出はコロナ前に比べて約60%減少したが、そのうち政府からの要請に伴う行動変容で説明されるのは12%ポイントだった。第2 に、各県における新規感染者数が1%増加すると、その県の人々の外出は2.2%ポイント減少した。第3 に、外出抑制のうち政府の要請が寄与したのは約4 分の1 であり、残り4 分の3 は政府のアナウンスや日々発表される感染者数など、感染に関する新たな情報を受け取った国民が、感染のリスクをアップデートしたことによって生じた。分析結果は、感染封じ込めに必要なのは法的拘束力の強い措置ではなく、人々の行動変容を促す適切な情報の提供であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形トレンドの研究については、主要な結果がすべて出ており、現在は研究結果を論文としてまとめている段階にある。また、当初は想定していなかったが、周波数を連続にしたケースでも、我々の手法が機能することが確認できている。 社会的距離政策の効果を測った論文は、現在までに2本執筆しており、それぞれ投稿中の段階である。また、第3の論文を執筆するため、現在データをアップデートしており、年内には、新しい論文を執筆できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は予定通りに進んでおり、これまで通り、研究に取り組んでいく。非線形トレンドに関する研究では、周波数を連続的にした場合を含め、1つの論文として完成する予定である。また、社会的距離政策に関しては、緊急事態宣言が終了し、しばらく経過したデータまで含めた分析をし、総括的な論文を執筆する予定。貨幣需要関数に関しては、その推定方法を確立したので、日本と米国のデータを用いてモデルを推定し、論文としてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で旅費が不要になった。また携帯の位置情報データを使用したため、データ入力と整理のために人件費が必要になった。
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