研究課題/領域番号 |
20K01594
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藪 友良 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (90463819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 貨幣需要 / log-log / semi-log / 金利 / M1 / ゼロ金利政策 |
研究実績の概要 |
米国の貨幣需要関数の研究では、1980年から2013年までのデータを用いて、log-log formがsemi-log formよりも優れていることを示した。しかし、この実証結果は、米国の特定期間でのみ成立する結果ではないか、という批判がありうる。我々の結果の頑健性を示すため、分析期間を至近まで延長することを試みた。主要な発見は以下の通りである。 第1に、2014年から2021年までの金利をみると、金利はマイナスになっておらず、これはlog-log formと整合的結果である。この点は、日本のようにマイナス金利を採用した国であっても同じである(預金金利はマイナスになっておらず、log-log formと整合的となる)。 第2に、(Sweep adjusted M1は2014年以降は利用できないため)、M1やCurrency Component of M1を調べると、2015-2018年に金利は上昇したが、M1やCurrencyは微増しており、log-log formと矛盾する結果が得られる。しかし、2020年に金利が低下すると、M1やCurrencyは急増し、これはlog-log formを強く支持する。2015-2018年の結果は、日本がゼロ金利政策を解除した2006年に生じた現象に似ている。日本では、2006年まで量的緩和が続いており、それが解除され、金利が上昇したとき貨幣需要は反応せず、貨幣需要関数が上方シフトしていた。米国についても、日本と同様に、貨幣需要関数が上方シフトしたかは、追加的情報が必要となるため、明らかではないが、興味深い現象といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに研究ができている
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今後の研究の推進方策 |
米国の貨幣需要関数の論文は、2013年までのデータしか含めていなかったが、これを2021年まで含めて、論文を改訂する。また、金利の下限をマイナスまで含めることを許容した貨幣需要関数を推定する。現在、推定方法が適切であるかをsimulationによって調べている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で旅費支出がなくなり、その代わりに、人件費での支出が増えたことで、差額が生じている。その差額は次年度の物品費に充当する。
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