研究実績の概要 |
(研究1)の「研究の目的」では、流通チャンネルごとのマニュファクチャラー対リテイラーの戦略的な行動をNash Bargainingを用いてモデル化し、チャンネルごとの競争状態を構造モデルによって表現する手法を提案し、実証研究を行うとした。さらにこの研究は2015~18 年度基盤(B)「合理的に行動する生産者と非合理的な消費者パラダイムの実証産業組織論における検証」を発展させたものになるとした。このため交付申請書に記載した「研究実施計画」では Draganska, M., Klapper, D., & Villas-Boas, S. B. (2010). A larger slice or a larger pie? an empirical investigation of bargaining power in the distribution channel. Marketing Science, 29(1): 57-74を参考にするが、この論文で仮定したマニュファクチャラーが要求し、リテイラーと合意した卸売価格を小売価格に転嫁することはないという仮定を緩めること、またマニュファクチャラーが小売価格の変動を観測することがない、すなわちretail price unobservability という仮定も緩めることを提案した。 2021年度に研究を進め、原材料高騰などにより製造原価が高騰するなかで、卸売価格をめぐってマニュファクチャラーとリテイラーが交渉を行う場合、卸売価格の高騰をリテイラーが消費者に価格転嫁(Price Pass-through)を行うことを許す経済学的なモデルを導出し、小売りデータを用いた実証例を示した。これにより両者の交渉力をはかるパラメータのみだけではマニュファクチャラー対リテイラーの真の力関係を測ることはできないことを示した。
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