研究課題/領域番号 |
20K01599
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
上田 和宏 日本福祉大学, 経済学部, 教授 (50203435)
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研究分担者 |
長谷川 光 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (30189534)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生活時間 / 時間使用データ / 組成データ |
研究実績の概要 |
2021年度には家族の生活時間の実証分析の結果をディスカッションペーパーとして発表した後,必要な分析を加えて専門誌に投稿した.その結果,Behaviormetrika誌にHiakaru Hasegawa and Kazuhiro Ueda, ” Empirical analysis of a time use model incorporating correlations among three household members” 49, pp.69-89 (2022)として掲載された. 本研究では,2006年「社会生活基本調査」の匿名ミクロデータを用いて,夫婦と10歳以上の子どもの生活時間を分析した.本研究の特徴は,1)3人の諸活動時間(通勤・通学,仕事・学習,家事時間など)の相関を考慮したベイズモデルを作り,Markov chain Monte Carlo (MCMC)法を用いて推定した点,2)生活時間のミクロデータがゼロを多く含む組成データの性質を持つので,それを考慮したモデルをLeininger et al. (2013)を参考に作り,生活時間を推定するための方法を提示している点である. 分析の結果,本研究の目的である家族の同一行動時間を考える上で重要な家計構成員の生活時間の間の相関などについての知見が得られた.通勤時間や仕事・学習時間,余暇時間について,父,母,子のそれぞれ2者の間に正の相関があること,父親と母親の家事時間の間に負の相関があること,母親の仕事時間と父親の余暇時間には正の相関があることなどがわかった.さらに,部分効果の結果から6歳未満の子どもの存在は父,母,10歳以上の子どもの労働時間や学習時間を減らし家事時間を増やすこと.母親の教育水準が高くなると労働時間が減り家事時間が増えることなど家族の属性と生活時間の関係が確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,前年度から始めていた家族の同一行動に関わる実証分析をまとめて成果を論文として発表することができた.また,家計メンバーの中で母親だけでなく父親や子どもの生活時間を分析することやその関りについて分析を行ったので,交付申請書の実施計画において今年度の研究の目的として挙げた女性以外の家族の生活時間の分析についても先行研究等の調査も含めて行うことができた.したがって,当初の目的はおおむね果たせていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については,家計構成員の就業形態の違いが生活時間にどのような影響を及ぼすかを分析するのかに関する研究に着手する.申請書の研究計画に記した家族の同一行動時間と幸福感や時間貧困の関りについて研究するに際して,先行研究を調査しているなかで就業形態と幸福感や時間貧困との関りを考慮することが重要であると考えられた.そこで,妻の就業形態に焦点を置きながら夫の就業形態の違いも考慮に入れることによって,家計メンバーの生活時間を計測する.さらに,子どもの有無や配偶者の有無など家計メンバーの属性との関係をも推定する.そうした分析を通して,就業形態や家族の属性と個人が自由に利用できる時間の関係を通して彼らの時間貧困についての研究へのアプローチを行う予定である.結果については,論文にまとめて公表できるようにする.ただし,年度内に公刊に至らない場合は,研究期間終了後,できるだけ早い時期に公刊できるようにする.
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備考 |
H. Hasegawa and K. Ueda, "Empirical Analysis of Time-Use Model Incorporating Correlations Among Three Household Members," Discussion Paper Series A, No.2021-359 (Hokkaido University), pp.1-23
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