研究課題
共和分関係にある単回帰モデルにおいて、バブル期を含む場合の最小二乗推定量の理論構築を進め、学内のワーキングペーパーにまとめた。最小二乗推定量は、説明変数と被説明変数間にあるラグを誤った場合、バイアスが生じ、そのバイアスはバブル期の偏回帰係数(共和分ベクトル)に依存することが分かった。このバイアスを補正するために、本研究では、ラグの推定を残差二乗和を最小化するラグで推計を行う方法を提案した。これによる最小二乗推定量は、バイアスを補正するとともに、ラグが既知の場合と同じ漸近分布を持つことが示された。また、この理論結果は、バブルの発生までの推定、バブル崩壊中までの推定、バブル崩壊終了後までの推定のいずれの場合にも適用可能であり、さらに、複数のバブルがある場合にも拡張された。また提案する推定手法は、いずれのケースにおいても、バブルの発生時点などの時点の推定が必要なく、どのバブルのステージあるのかも調べる必要がない。現状の共和分回帰では、このようなバブル期が含まれるケースが存在しないことを仮定して理論構築されているため、VARモデルのようなパラメータの数に対して、データの大きさTが小さい場合は、推計が困難になることが知られていた。本研究では、あくまで単回帰モデルという簡単な共和分関係での結果ではあるものの、バブル期を含む可能性のある長期の時系列データへの適用可能性を示唆する重要な結果であると思われる。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書を作成した当時では、最も難しいと思われていた、共和分関係の推計問題をを取り組み、その理論結果を求めることができた。非常に長文の研究なので、細部にミスがある可能性があるため、研究成果の発表も海外では全く行っていなかった。しかし、コロナ終息後は、国際学会などで意見を取り込み、よりよい研究にしていきたい。
これまでの理論研究を、いわゆるTriangular systemとよばれる多変量の重回帰モデルのクラスまで拡張したい。また非線形最小二乗推定になると思われるが、VARのシステムへの拡張にも取り組みたい。最後に、不動産バブルや株価指数バブルなどの実証研究にも取り組む予定である。
新型コロナウィルスの影響で、国内・海外出張ができなかったためで、今後は研究成果を発信していきたい。
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Woking Paper Series, Economic Society of Kansai University
巻: Woking Paper Series F-101 ページ: 1-50