本研究は外国学位を持つ日本人大学教員のキャリアの特徴を留学と帰国の2種類の選択か ら実証的に明らかにすることを目的とした。学校教員統計の2次利用を申請して入手したデータを用いて分析した結果を国際学会で2回発表し、国内外の学術誌に2本掲載した。特に2023年2月には米国の国際比較教育学会(CIES)にて発表し、同年5月には著名な国際学術誌に論文が掲載された。これら分析の結果からは、外国学位を有する教員は高職階であり、一定の特徴(女性や教授職および人文社会系の教員が多い)を持つことが示された。これら特徴から、留学後の帰国には日本での高等教育拡大による就職先確保がプル要因になっている可能性を推察した。 最終年度は、留学先でのプッシュ要因によって日本に帰国するのか否かの推察に繋げるため、米国大学教員の満足度調査結果を収録したデータセット(COACHE)を分析し、その結果を論文として国際学術誌に投稿した。同分析の結果、米国のアジア系女性かつ外国籍大学教員は機関移動意向が他の外国籍大学教員と同程度に不明確であり、意向の不明確さは大学勤務での不満足度と強く関わることや、特に同僚との交流において満足度の低さが示された。白人米国籍大学教員が強い機関移動意向を示すことや、同男性における満足度の高さとは対照的な結果となった。 COACHEデータ取得は計画時に取得を予定したデータセットの代替措置であり、取得には大学間研究交流協定の締結が必要だったため一定期間を要した。この間、学位取得留学に繋がる経験として学部生の留学を考え、これら留学の基盤を成す大学間パートナーシップの分析を試みた。なぜなら近年は学部留学生の6割以上が大学間協定を利用しているためである。これら分析結果を国際学会で発表し、また国際学術誌に2本の論文を投稿し1本が既に受理された。
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