研究課題/領域番号 |
20K01606
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西脇 雅人 大阪大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (80599259)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カルテル / 構造推定 / 部分識別 / 検定 |
研究実績の概要 |
企業の反競争行為のなかでもカルテルはとりわけ重要な位置を占めている。先進国では、カルテルは違法行為であり、関係した企業や個人には民事罰および行為が悪質な場合は刑事罰が科される。カルテルによる経済厚生の損失は年間1700億円とも推定されている。このような違法行為かつ反競争行為に対して、経済学はどのような役割を果たすことができるだろうか? 本研究では、現在進行形の(あるいは過去に摘発された)カルテルに迫る方法を研究している。計量経済学的な方法を用いて、企業の行動記録である観察データから、カルテルを発見する手続きを探求するのが本研究である。前年度の研究から、既存の「競争 v. カルテル」検定では、カルテル期間のデータを用いているにも関わらず、カルテルが検出されず、競争状態にあると判断される場合があるということが発見された。今年度では、このような問題を克服する方法の開発に取り組んだ。部分識別の考え方を基本的な検定方法のフレームワークとして利用し、操作変数を用いて、モデルの選別を可能にする方法を開発した。これはいわゆるカルテルのスクリーニングに該当する方法であると考えることができる。この新規に開発したスクリーニング方法を用いることで、既存の方法では失敗したカルテルの捕捉が可能になることが分かった。また、カルテルを誘発しやすい市場構造を明らかにするという構造アプローチによる研究も大きく進展した。垂直関連市場において、企業間に垂直的な資本関係が重要なカルテルインセンティブ要因となること、また垂直合併企業および非垂直結合企業のそれぞれのインセンティブがどのように市場で共鳴し合うかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長年考えてきたアイデアを具現化できるスキルを身につけたことがその要因と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発したカルテルスクリーニング方法を現実のデータに応用し、その信頼性を確認および向上させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、当初計画の学会等に参加できなかったことが主な要因である。最終年度である令和五年度は、可能な限り国内外の学会で研究成果を報告し、世界に広めるよう努力をする。また、論文にまとめて出版するための校正費用および投稿費用として使用することを計画している。
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