研究課題/領域番号 |
20K01613
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中山 徳良 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90278854)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 需要の価格弾力性 / 水道水 / クロスセクションデータ |
研究実績の概要 |
本研究の目的の1つは、水道水の需要の価格弾力性の数値を得ることである。 分析の手始めとして、水道事業者の過去のクロスセクションデータと現在得ることができる最新のクロスセクションデータを用いて需要関数の推定を行った。データとしては市営の末端給水事業者のものを用いた。需要関数の被説明変数を一人当たり有収水量、説明変数を供給単価、所得、1世帯当たり人口、65歳以上人口比率とし、最小二乗法を用いて推定を行った。 最新のデータは2018年度のものであるので、2018年度のデータを用いて推定を行った。その結果、価格の係数は有意であり、負になった。しかし、所得の係数は有意ではなかった。また1世帯当たり人口の係数は有意であり、符号は負であった。さらに65歳以上人口比率の係数は有意であり、符号は正となった。需要の価格弾力性は0.29と推定された。過去のクロスセクションデータとしては2003年度のデータを用いて推定を行った。推定の結果、価格の係数は有意で符号は負、所得の係数は有意で符号は正、1世帯当たり人口の係数は有意で符号は負、65歳以上人口比率の係数は有意で符号は正となった。また、需要の価格弾力性は0.32と推定された。 2003年度の他に2014年度、2015年度、2016年度、2017年度の需要関数の推定も行った。これらの年度の推定結果は2018年度のものと有意性や符号は同じであった。また、需要の価格弾力性についてもほぼ同じ大きさで、0.3程度であった。2003年度と比較すると、近年の需要の価格弾力性の値は若干小さくなったのかもしれない。さらに、所得の係数を見ると有意でないことは2014年度から2018年度まで変わりはないが、2015年度以前は符号が正であったが、2016年度以降は符号が負に変化していた。これらについては、さらに分析が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度については、主としてクロスセクションデータを用いて水道水の需要関数を推定することが目標であった。水道事業者の公表データを収集し、推定ができるように整理して、一定の推定結果を出すことができた。そのため、推定の改良の余地や結果の解釈について課題が残されてはいるものの、おおむね順調に研究は進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、まずクロスセクションデータを用いた推定結果について論文としてまとめる。 次に、2019年度のデータが発表されるので、そのデータを追加し、パネルデータを用いた需要関数の推定を行う。そして、学会での報告、あるいは学術誌へ投稿を行う。 さらに、水需要のアンケート調査が実施できるように準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には水需要のアンケート調査を計画している。十分な調査を行うためには、より費用がかかるため、2021年度の助成金額では不足することが予想される。そのため、2020年度の使用額を節約し、アンケート調査に備えることにした。したがって、次年度使用額として発生した金額は2021年度にアンケート調査のための費用として支出する予定である。
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