研究課題/領域番号 |
20K01634
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 萬里 青山学院大学, 経済学部, 教授 (40424212)
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研究分担者 |
田中 鮎夢 中央大学, 商学部, 准教授 (20583967)
白井 克典 大阪学院大学, 経済学部, 准教授 (90547225)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 直接投資 / クロスボーダーM&A / グリーンフィールド投資 / 集積効果 |
研究実績の概要 |
研究初年度は本研究課題の分析に必要となるデータの収集整理が作業の中心となった。企業レベルのデータに関しては、経済産業省「企業活動基本調査」、「海外事業活動調査」の個票データの目的外利用申請により、企業レベルのミクロデータセットを分析可能な形にデータベース構築を進めた。さらに、投資先の情報を拡充するため民間データ会社が提供するM&Asの案件データを活用し、投資先の属性に関する情報を得た。投資先都市の属性については各都市が公表する統計データを編集したデータベースを利用した。記述統計量に基づく初歩的な分析によると、投資先の都市属性について、市場規模を示すGDP規模や人口規模や、集積を示す変数として採用した外資企業数や外国人居住者数が平均的に大きい傾向が示された。投資額との関連性については散布図や相関係数に基づく記述的な分析から両者の間に統計的に有意な正の相関関係が観察され、その反対に投資元と投資先の物理的な距離が投資額と負の相関関係を持つことが示された。これらの事実は集計化された2国間投資データに基づく重力モデルの推計を通じた先行研究の結果と整合的である。分析ではさらに都市のインフラについても航空旅客輸送量等のデータも利用しながら検証を進めたが、インフラ面において投資との有意な関係性を見いだせなかった。今後、データベースをさらに拡充させ、他の都市属性についても検証を試みるほか、クロスボーダーM&Asとグリーンフィールド投資の決定要因にどのような差異が認められるかといった点についても分析を試みる。また、単純な相関関係の検証にとどまらず、操作変数法やdifference-in-differences、propensity score matchingといった手法を適宜採用しながら因果関係の有無を特定していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に沿って実証分析の作業を進めているが、新型コロナウイルス感染症蔓延によって在宅勤務となったためデータ収集や統計の目的外利用申請の作業に遅延が生じた。このため実証分析に必要なデータベースの構築が当初予定より遅れ、記述統計量に基づく初歩的な分析について進捗が遅れている。具体的には企業レベルの分析に必要なミクロデータのデータベースの構築が遅れており、直接投資の有無あるいはクロスボーダーM&Asかグリーンフィールド投資かというタイプ別に企業を振り分け、ステータスに応じて企業の基本属性(企業規模、資本労働比率、生産性など)について集計表・基本統計表を作成し記述統計的な分析を進める予定であったがデータの入手に想定以上に時間を要したため着手に至っていない。これらの企業のデータベースを利用した詳細な分析は次年度以降に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者と分担者の間で分析作業の分担を進め、作業の遅延を解消する。遅延の一つの要因に顔を合わせた研究打ち合わせが困難な状況があることから、オンライン会議システムを利用した研究打ち合わせを効果的に開催し、作業分担の効率化を目指す。並行して分析手法や初歩的な分析によって示唆されることについて、類似のデータを利用してこの分野の研究蓄積を有するMichael J. Ryan (Western Michigan University)教授と意見交換を実施し、研究を効果的に推進する。中間的な研究成果については逐次、ディスカッションペーパー等にとりまとめ、研究会や学会での報告を実施することで研究内容について外部からの評価を受けながら研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国内外への出張が新型コロナウイルス感染症による世界的な蔓延により次年度に延期となったため、主に旅費に充てる予定であった未使用額を次年度に繰り越すこととした。
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