人口減少が低成長と結びつくことは直感的にも理解しやすいが、一方で、どのような経路で、経済パフォーマンスに影響を与えるのかについては必ずしもこれまで十分な分析は行われていない。例えば、企業内の労働者の年齢構成の変化は、企業のイノベーションの発現確率に影響を与え、それにより生産性が低迷しているのであろうか。本研究では、早期希望退職による企業内の労働者の年齢構成の変化に注目し、早期希望退職の発表と企業業績との因果関係を検証し、同時に、従業員のダウンサイジング後にどのような戦略を採用すれば、企業に業績と生産性の向上をもたらすことができるかを調査した。研究の成果は、現在英文ジャーナルに投稿中である。 本研究課題のもう一つの研究目的は、AIをはじめする経済の仕組みを変えるような大きな技術革新が起きている中で、こうした新技術の導入が、労働分配率や賃金といったマクロパフォーマンスに与える影響について分析を行うことであるが、今年度はグローバル化と国内の労働市場との間の関係について、特に、グローバル化が国内雇用と国内の労働者のスキル構成へ与えた影響を実証的に検討した。本研究の成果は東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第10回共催コンファレンスで報告したほか、近日中に日本銀行のワーキング―ペーパーとして公表予定である。
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