研究課題/領域番号 |
20K01637
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
小川 昭 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (70514537)
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研究分担者 |
佐々木 弾 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30345110)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 成績評価 / 科目選択 / ゲーム理論 |
研究実績の概要 |
(2020年度の研究遅延を踏まえ)2021年度については、研究代表者・研究分担者で、絶対評価・相対評価の併用について異なるimplicationを与える状況をそれぞれモデル化して分析し、最終的に両者を統合する形で評価する、という方針で研究を推進した。 研究代表者側では、「相対評価と絶対評価を併用した方が望ましい状況のモデル分析」を推進した。結果、2020年度の報告に挙げたような「実質的には自明と思われるモデル」よりはいくらか進展を見せた。現時点で得られている結果は、「以下の条件の下では、学生側の自己選択メカニズムによって、能力調査と結果の強制を経ずに『能力別クラス』が実現するため、能力の低い側のクラスにおいては(相対評価を用いることにより)絶対評価のみの評価の場合と比べて相対的に高い努力を学生から引き出すことができる」というものである。モデルの主要な仮定は(箇条書きのため「/」で項目を区分):2タイプの学生(能力高・能力低;私的情報)、2クラスの開講/絶対評価クラス1、相対評価クラス1のどちらかを全学生が必ず履修する/各学生は科目を選択し、それがobserveされてから努力するかしないかを選択/成績評価基準(grading policy;メトリックのあり方)によって学生の努力の最大化を目指す、というものであり、高能力向けクラスを絶対評価、低能力向けクラスを「上限成績の低い相対評価」とすることによって、上記の結果を得た。 研究分担者側では、「相対評価と絶対評価を併用した方が望ましくない状況のモデル分析」を推進した。これは科研費申請の際に記載したモデルの発展・一般化を目指すものであるが、まだ進展は(申請書対比で)顕著とまで言える状況ではなく、論文として投稿するには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のなかで対面での研究討議等が難しいことを前提に、2021年度は「分析すべき状況を2分し、それぞれが分担する形で研究を進める」こととしたものの、やはり討議や研究の(未完成な)途中経過発表による研究促進という効果を欠いたもとでの研究であったがゆえに進展が鈍いものに留まったことは否定できない。 (このようになった一因は、研究代表者側にある。ゼミ形式で指導を担当していた複数の学生が、2021年に「急死」したことによって春先から年末に掛けて心身に相応の負荷がかかってしまい、結果的に[せいぜい上記の結果を導出するのが精一杯で]研究分担者との学問的交流や相互調整を十分に行うことができなかった。研究代表者側の2021年度科研費支出が0だったのも、この事情を映じたものである)
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の側で取り組んでいる「相対評価と絶対評価を併用した方が望ましい状況のモデル分析」については、現時点では仮定が強すぎるためまだ投稿には適さないものの、仮定の緩和によって投稿可能となる可能性が十分にあると考えている。このため、最優先に仮定の緩和によるモデル適用可能性の向上に取り組む。具体的には例えば、クラス数を絞ったままでの2タイプから多タイプへの緩和(結果の維持が可能であれば、連続型タイプが望ましい)/努力水準を「するかしないか」の2択から多様化(成績評価が離散的であることから、努力水準を連続変数として内生化すると結果が維持できないのではないか、と憶測しているので、「どこまでなら緩和しても結果を維持できるのか」の検討になる見込み)、といったことを検討している。また、現状のモデルでは相対評価側で良い成績を取ることが不可能である(上限の成績を低く設定することによって自己選択メカニズムを機能させている)ため、それを正当化できるような事例の有無について調査を行うことを想定している。 研究分担者側では、「相対評価の併用が望ましくない条件」の一般化・明確化を行い、研究代表者の分析との相互補完を図る。 その上で、研究分担者側の研究成果と併せることにより、「どのような状況であれば相対評価の併用が正当化しうるのか」条件の整理を進めることによって、研究成果としてまとめることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の(計画対比での)遅延により、学会・研究会の出席・発表をほとんど行えなかったため、支出も遅れることになった(2021年度の科研費を使用した学会出席は、研究分担者がオンライン出席した「RCEA-Recent Developments in Economics, Econometrics and Finance」のみ)。 研究の進捗によって、当初想定していたように発表等での内容改善を進めるため、(コロナ禍の影響軽減も踏まえ)2022年度以降に旅費等で支出を計画している。
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