研究課題/領域番号 |
20K01644
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
太田代 幸雄 南山大学, 経済学部, 教授 (30313969)
|
研究分担者 |
蔡 大鵬 南山大学, 経済学部, 教授 (20402381)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 企業の異質性 / 金融市場の不完全性 / 国際貿易 / 海外直接投資 / 経済成長 / 貿易政策 |
研究実績の概要 |
本研究は,既存の「企業の異質性」を仮定した国際貿易モデルに動学的要因を導入し,「金融市場の不完全」が存在するとき国際貿易の特性が如何なるものであるのかについて研究する。また,借入制約がどのような産業・企業に影響を及ぼし,その結果,海外進出企業数がどれだけ変化するか等の問題を考察することで,多様性や多層性が混在する国際市場のメカニズムについて理論的・定量的に分析することを目的としている。研究の1年目ということで,テーマに関連する既存研究の流れを整理し,新たな理論構築に向けてどのような要因が重要であるかを提示することから研究を始めた。また,本研究課題の理論が,現実に対してどれだけの説明力を持っているかについても併せて検討した。 今年度も,昨年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症の問題と関連して,研究環境も大きく変化した1年であった。国内外の学会は中止,あるいはオンライン化され,研究機会が減少した環境下ではあったが,金融市場に関する研究Karasawa-Ohtashiro and Li (2022)を刊行した。この論文では,銀行業に関する産業組織論的アプローチに基づくMonti-Klein モデルに公的銀行を導入した混合寡占モデルを展開している。このような経済における均衡の性質について分析した後,政府による完全民営化政策,民間銀行の合併行動,さらに中央銀行による金利政策の効果について検討している。また,民間銀行の合併参加条件を導き,民営化および合併が生じたときの均衡を,数値例を用いて比較した。 以上は,本研究課題における既存研究の整理の過程で生まれた業績である。上記の通り,既存研究では不十分な要因をモデルに盛り込むことでこの分野の研究をさらに進展させたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究計画は,前年度において行った「研究期間4年間の計画」を俯瞰し,既存の理論に関する特徴・改善点を整理したことをうけて,研究テーマについて,海外直接投資が行われている状況に関する理論の構築を行うことが重要な目標の1つであった。研究分担者と詳細な打ち合わせを行い,新たな理論構築に向けて,どのような要因が重要であるかについて検討した。そのような検討の中で,「実績の概要」の項でも述べたような研究を1本刊行した。すなわち,不完全競争下における金融市場の問題に関わる研究である。以上の分析を受けて,研究課題に関わる重要な点等が,さらに浮き彫りになってきたと考えている。 以上の内容から,当初の目的をほぼ遂行できたと考えているため,以後,完成度の高いモデルを構築し,海外の研究論文雑誌に投稿する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
国際貿易論においては,大別して各国企業が国内で生産活動を行い完成した財を国際的に輸出入するモデルと,各国企業が海外直接投資によって他国に進出しそのプラントで生産活動・販売を行うモデルが存在する訳であるが,残りの2年間でプロジェクトを完遂するために,令和4年度は,上述の要因が存在する経済における海外直接投資の動学モデル構築をさらに進める。モデル構築の作業手順もこれまでと同様で,研究分担者との打ち合わせを行いながら代表者がモデル構築を担当する。さらに,現実的に妥当なパラメータを設定し,数値計算を行い現実的な状況における解の性質を検証する。また,必要に応じて現実のデータを用い計量分析を行う。最後に,様々な機会における研究発表を通じてモデルの完成度をより高め,海外の研究論文雑誌に投稿する。 本研究の締めくくりとして,令和5年度は,これまで分析してきたモデルに関する経済厚生分析および経済政策の効果に関する分析を行う。特に,経済厚生分析は,動学モデルにおいては必ずしも容易に分析可能とは言えないことも多く,本研究課題のモデルも構造が複雑であるため,シミュレーション等の数的処理が必要になる可能性が高い。代表者・分担者でプログラミング等を精査し分析を完成させる必要が有るかもしれない。また,実証分析についても併せて分析を進める。代表者と分担者との基本的役割分担に変更は無いが,研究の最終年度であるため,研究全体のまとめ,将来の課題を議論し作業を完成させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた状況についてであるが,新型コロナウイルス感染症との関連で,昨年度と同様に,1年間にわたり研究費の使い道にあまりにも大きな想定外の状況が続き,研究費執行の見直しが必要になった。令和3年度は,令和2年度よりも例年の状況に近づいているため,予定通りの執行が可能であると考えている。 研究費の使用計画としては,経済学関連図書の購入,シミュレーション分析用・実証分析用ソフトウェアの購入,および,もし可能な状況になったとすれば,国内外で開催される学会発表・参加に使用する予定である。
|