環境規制の強化、貿易パターン、および汚染排出量については、研究成果としてTakarada et al. (2022)がある。そこでは、国際的な排出量取引が国際輸送部門でのみ実行された場合に、どのようなタイプの国が排出量を購入する国になるのか、売却する国になるのかを明らかにした。そして、排出量取引によって、国際輸送部門は効率的に排出量を減らすことができるので、一定の世界的な排出量でも、国際輸送サービスの生産量は拡大することになる。その結果、国際輸送サービスの価格には低下圧力がかかり、国際輸送サービスの輸出国の交易条件が悪化することになる。財の交易条件効果もあるので、国際輸送サービスの価格の低下によって需要が増える財を輸出するのかどうかによって、総合的な交易条件効果が決まってくることを示した。国際輸送部門での国際的な排出量取引を導入する際に留意すべき点を明らかにしており、政策的にも意義のある研究である。
地域貿易協定で各国の環境規制についても取り決める場合が増えている。特に、環境規制を緩和しない、あるいは環境規制を調和させようとする動きがある。これに関しての研究成果として、Kawabata and Takarada (2023)がある。この研究は、環境規制の調和による各国の生産構造の変化、ひいては国際輸送市場への影響を考慮するために重要な研究となる。
最終年度は、Takarada et al. (2022)を参考にして、国際輸送の拡大が各国のオフショアリングに及ぼす影響について分析できる基礎的なモデルを構築した。そのモデルを発展させることで、各国のサプライチェーンの変更を考慮に入れた国際輸送に対する環境規制の分析が可能となる。引き続き研究に取り組む所存である。
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