本研究の目的は、現代の国際貿易における川上部門の重要性を考慮しながら「プロダクト・イノベーション(新製品開発や新製品の導入)と貿易費用の関係」および「イノベーション活動に対して内生的な輸送費や輸送価格の与える影響」を理論的に解明し、イノベーション活動と国際貿易のこれまでの議論を発展・拡充させることである。イノベーションは、市場の発展、持続的な経済成長、および、社会の厚生水準の拡充にとって、必要不可欠となる経済活動であり、それは、企業の競争環境だけに限らず、国際貿易からも影響を受けることが知られている。本研究は、人々の「暮らし向き」と密接に関連するイノベーション活動と国際貿易の関係に注目し、理論的な分析をおこなった。この点に本研究の社会的な意義と重要性がある。 先に述べた研究計画に沿って、研究期間全体を通じて4本の論文を作成し、その内、2本は既に国際的な学術専門誌に発表・掲載することができた。研究の最終年度には、本研究を遂行する過程で、それらの発展的な話題に関する研究もおこなうことができた。「輸送」は製品を仕向け地(供給先)に届けるための特殊な中間財と考えることができる。そのため、寡占市場において輸送に注目することは、生産の垂直構造を考えることに等しい。最終年度は、本研究の発展的・派生的な話題として、生産の垂直構造も考察し、川上市場と川下市場の両方で価格競争が行われるような市場構造の理論モデルを構築し、分析をおこなうことができた。この研究は、論文の形にまとめ、国際的な学術専門誌に掲載している。
|