研究課題/領域番号 |
20K01647
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
國枝 卓真 関西学院大学, 経済学部, 教授 (60511516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金融市場の発達 / 経済成長 / 不平等 / 制度の質 / 所有権の保護 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトの研究の目的は、金融市場の発達は経済成長を促進するのかそれとも阻害するのかを、理論的・実証的に分析するものである。金融市場の発達は、各国の所有権の保護の程度などの制度的な要因によって規定される。そこで、2020年度は、その制度的な要因と経済成長・不平等の関係を分析した二つの論文を完成させた。一つは、神戸大学の大学院生・高橋雅史氏との共同研究による成果であり、これはすでに国際ジャーナルに採択され、2021年度中に公刊予定である。この研究では、所有権の保護に関する制度の質と不平等の関係を、経済成長モデルを用いて理論分析したものである。そこでは、制度の質が改善していくと、その初期においては国内の不平等は拡大していくが、十分改善するにつれ不平等は縮小していくという結果を得た。もう一つは、神戸大学の胡云芳氏、西村和雄氏、そして、Washington University in St. LouisのPing Wang氏らとの共同研究の成果であり、これは2020年度に全米経済研究所(NBER)のワーキングペーパーとして出版された。そこでは、技術を採択する際に、制度に関連した知識資本に関するバリアーが高すぎると、先端的な技術の採択が阻害されて、中位所得の罠に陥ってしまうということを理論的に示したうえで、代表的な国々のデータを使用して、各国の経済成長と中位所得の罠に陥ってしまうパターンを実証的に分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響により、計画していた国内外の学会やコンファレンスに出席できなかったり、また、共同研究者との研究打ち合わせが対面でできなくなるなど、負の影響があったにもかかわらず、2020年度は一本の論文が国際ジャーナルに公刊予定となり、また一本はNBERのワーキングペーパーとして出版できた。後者は国際共同研究であり、その研究以外にも、さらに同じメンバーで進めているプロジェクトもある。以上により、本プロジェクトはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も2020年度と同様に、研究計画に従い、金融市場の発達が経済成長に与える影響を分析する。2021年度は、特に知識資本の蓄積の分析に焦点を当てる。知識資本を使用する産業で働く労働者の賃金と旧来の物的資本を使用する産業で働く労働者の賃金格差は、金融市場の発達によりどのような影響を受けるのかを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者と対面で研究打ち合わせを行ったり、国内外の学会・コンファレンスに出席をする計画を立てていたが、新型コロナウイルスの蔓延により、それらが実行できなかったため、未使用額が生じた。2021年度には、繰り越した額を、旅費として及び学会参加費として使用し、当初の予定通り国内外の学会で研究成果を報告する。
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