研究課題/領域番号 |
20K01651
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
松山 淳 富山大学, 学術研究部社会科学系, 准教授 (00624339)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 子どもの貧困 / ウェルビーイング / 多次元指標 |
研究実績の概要 |
2022年度の研究では、多次元指標を用いたウェルビーイングの測定に関する研究を行った。具体的には、「日本版General Social Surveys(JGSS)」の2012年、2015年、および2017/18年のデータを利用して、ウェルビーイングの多元性に配慮した指標を構築し、その指標を用いて、2010年代における日本の多次元貧困率の評価を行った。この指標を用いることで、所得の1次元指標と多次元の指標が、どのように共通し、どのように異なるかを分析した。主な知見はつぎの通り。 ①貧困者の識別:2012年から2018年にかけて、日本全体の所得の貧困率は減少傾向にあるのに対し、多次元指標の値は大きく変化していない。さらに、誰が貧しいかの識別に関して、多次元指標と所得の指標では異なることが明らかになった。この点は、外国の先行研究でも確認されているが、日本の文脈でも確認された。どの指標に注目するかによって、対象となる社会や集団の評価は異なることがあり得、ひいては、異なる政策的インプリケーションが予想される。 ②貧困の世代間連鎖:回答者が15歳のときの各世帯の経済的状況について、2つの指標は共通の判断を下すことが明らかになった。つまり、子供時代の家計状況が厳しいほど、多次元貧困率と所得貧困率の値が高い。これは、貧困の世代間の連鎖を示唆するものと解釈されるが、この問題は日本を含め先進国では広く知られている。本研究の分析により、2010年代のデータで多次元指標を用いてもこの問題が再確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 「研究実績の概要」で述べたように、「日本版General Social Surveys(JGSS)」のデータを利用して、ウェルビーイングの多元性に配慮した指標を構築し、その指標を用いて、日本の貧困に関する研究を行った。この研究に基づき論文を執筆し、研究報告を行った。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られた知見に基づき、引き続き研究を進める方針であるが、とくに、つぎの点に留意する。分析に用いた直近のデータは2018年であるので、本研究の対象期間はCovid-19が広まる前までである。したがって、コロナ禍が家計に与えた影響の分析は、最新のデータが利用可能になれば、申請後、利用許可を得たのち、取り組む方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由。旅費については、Covid-19により、移動が制限されたため、旅費を使用する機会がなくなったことによる。また、物品費については、申請時に想定した額よりも安い価格で購入できた物品がいくつかあった。そのため、物品費が予定よりも安く抑えられた。 使用計画。旅費については、研究調査および打ち合わせ、学会発表などに使用する予定である。物品費については、研究に必要なPC周辺機器等への使用を予定している。
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