研究課題/領域番号 |
20K01668
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
関 麻衣 立命館大学, 経済学部, 准教授 (70771468)
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研究分担者 |
澤田 康幸 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (40322078)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育 / 自学自習 / 認知・非認知能力 / 無作為化比較対照実験 / 非市場競争 / スピード競争 / ピア効果 |
研究実績の概要 |
研究の目的は、現在問題となっている開発途上国の「学習危機(Learning Crisis)」を解決するため、有効な教育介入の種類や方法を探る点にある。具体的には、個人別・学力別に自学自習で学ぶ学習法(公文式の数学教材を現地化したもの)をバングラデシュのBRAC Primary School(BPS)の生徒に無作為に提供するフィールド実験を通じて収集したデータを解析する。また、追跡調査では、BPSを卒業した調査対象の元生徒達と保護者の追跡を行い、その後の進路や就職などについて調査を行う。2021年度前半は学会や大学セミナー(オンライン)での発表を行いながら、査読付き国際ジャーナルに投稿するという活動を継続し、各所で得たコメントを研究に反映していた。ようやく2021年9月に教育介入が認知能力と非認知能力の向上に与えた正の効果に関する研究がRevise and Resubmitとなった。この時の査読者の1人のコメントをヒントに、新たな研究を開始しドラフトを学会投稿し採用された。さらに、2022年2月に介入群の生徒の日々の学習歴データを用いたピア効果解析(特にスピード競争の影響)を行った研究もRevise and Resubmitとなった。また、2022年2月から3月にかけて、フィールド実験を通じて収集されたデータの長期的効果を探るための追跡調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2本の論文がRevise and Resubmitになった(2021年9月1日Economic Development and Cultural Change、2022年2月24日Oxford Bulletin of Economics and Statistics)。その過程で、査読者からの問いかけをヒントに、新たな論文原稿を執筆し、2022年度日本経済学会春季大会に応募し採用された(計画以上の進展)。また、コロナ禍で延期せざるを得ずにいたfollow-up surveyを2022年2月から3月にかけてついに実施できた。バングラデシュに在住する研究チームが調査団を指導しながら日々タブレットで収集した調査結果をデータベースにアップし、日本在住の研究チームがほぼリアルタイムでデータチェックを行い、異常値やエラー疑いをバングラデシュチームにフィードバックするというPDCAを回した。全員がフィールドに入れるわけではないというストレスはあったが、これまで培ったチームワークがうまく機能した。適宜学会発表に参加しながら研究へのフィードバックを集め、若手研究者やリサーチアシスタントの育成機会を確保している。
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今後の研究の推進方策 |
2本のR&R論文を改訂し、2022年度内のジャーナル掲載を目指す。日経学会春季大会で発表の論文は、討論者のコメントを反映した原稿をワーキングペーパーとして公開し、夏を目途に査読付き国際ジャーナルに投稿する。Follow-up surveyで収集したデータの分析については、夏に分析と初稿の執筆に取り組み、ワークショップや学会などでの発表を通じてフィードバックを収集し原稿の質向上に役立てる。今年度は最終年度でもあるので、関連する新たな研究案について検討を進め、新たな研究費獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
Follow-up surveyは2021年度に実施できたものの、コロナ禍の影響で年度末(2-3月)までずれ込んだ。故に本調査のデータ処理や基礎分析を担うリサーチアシスタントの人件費が次年度にずれ込む。また、査読付き国際ジャーナルのR&Rへの返信も次年度にずれ込んだため、英文校正費の支出も年度をまたぐこととなった。
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備考 |
河原崎燿発表"Haste Makes No Waste:略” 2021年7月 Summer School on Socioeconomic Inequality ; 関麻衣発表(同論文)2022年1月 京都大学 アジア経済発展論研究会セミナー; 澤田康幸寄稿(産経新聞2022年3月10日および読売中高生新聞2022年4月1日)
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