研究実績の概要 |
本年度の主要な研究成果は,"Input Price Discrimination with Passive Partial Ownership" と題された論文 (Hu, Mizuno, and Song, 2021) が英文査読付き雑誌に受理されたことである。この論文では,1つの川上企業と2つの川下企業が存在する市場を考え,川上企業による投入物価格差別が厚生に与える影響について分析した。その結果,川下企業間で株式の部分保有が行われている場合,川上企業による投入物価格差別は総余剰や消費者余剰を増やす可能性を発見した。多くの先行研究では,投入物価格差別は厚生悪化の効果を持つことが知られているが,本研究において,それが必ずしも正しくないことが分かった。この研究は研究実施計画において考えられていたものである。 それ以外の研究成果として,"Endogenous Timing and Manufacturer Advertising: A Note"と題された論文 (Hu and Mizuno, 2020) も英文査読付き雑誌に受理されている。この論文では,1つの川上企業と2つの川下企業が存在する市場を考え,川上企業が広告投資を行うことが可能である状況を分析している。その結果,川下企業間の競争が激しい場合に,広告投資が促進されることが分かった。広告投資が多いことは川下企業にとって利益をもたらすので,川下企業間の競争の激化が川下企業の利潤を増やすかもしれないということが分かった。この研究は本研究課題で想定している垂直的市場と関連しており,垂直的市場の性質を明らかにする際に得られた副次的な成果となっている。
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