2022年度は,先物市場における株式保有の研究を進めた。電力など市場では,先物市場の存在により競争が激しくなることが理論的に知られている。このような市場において株式の保有がなされると,先物市場の存在による競争促進効果が弱まると予想される。そこで,先物市場を伴う市場を分析した先行研究に株式保有の要素を取り入れることで,均衡がどのような影響を受けるか調査した。現在は,どのように分析結果をまとめるか考えている状況である。また,本研究課題の重要な要素に垂直的市場があり,それと関連する研究をいくつか行った。例えば,「Bertrand competition in vertically related markets」と題される論文では,垂直的市場における同質財価格競争について分析を行い,企業の効率性改善が企業の利潤を低下させる可能性を指摘した。この論文は査読付き雑誌であるApplied Economics Lettersに受理された。また,「Capacity choice with upstream investment」と題される論文では,垂直的市場における生産容量の選択に関する研究を行い,企業が過剰な生産容量を持つ条件を提示した。さらに,「Downstream new product development and upstream process innovation」と題される論文では,垂直的市場における研究開発についての研究を行い,川下企業の新製品開発の戦略的性質を明らかにした。これらの研究は,査読付き雑誌から改定要求を受けている。今後は,これらの論文を出版できるようにしたいと考えている。
|