研究課題/領域番号 |
20K01679
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 章 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (10294399)
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研究分担者 |
乃村 能成 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (70274496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人口減少 / 少子高齢化 / 外国人労働者 / 移民 / シミュレーション分析 / 動学的分析 / 労働力不足 / 厚生分析 |
研究実績の概要 |
人口減少・少子高齢化が急速に進展する日本では、経済を支える労働力人口の確保が喫緊の課題となっている。少子化対策による出生率の引き上げが望まれるが上手くいっていないのが現状であり、外国人労働者の受け入れを増やすことが現実的な選択肢の一つとなっている。日本政府は2014年、10年間で200万人の外国人労働者の受け入れを検討すると発表した。同じ200万人を受け入れるにしても1~2年で200万人を受け入れる場合と10、20年かけて少しずつ受け入れる場合とでは、経済や人口、個人の効用は変わってくる。本研究では、このような移民にかかわる問題を分析できるように、「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」の拡張を行った。そして、総計で200万人の移民を受け入れる場合に、各年の移民の数を均等に配分し、1~2年の短期間に集中して受け入れる場合と10、20年かけて少しずつ受け入れる場合に関して、一人当たりの効用や将来の人口水準への影響について定量的な分析を行った。 シミュレーション分析の結果、移民の受け入れ期間を9年にすると(現在世代、将来世代を含めた全ての世代について)個人が得られる効用が最大になり、効率性の点では、9年の受け入れ期間が最も望ましいとの結果が得られた。また、長期的な人口の水準については、受け入れ期間が長ければ長いほど大きくなった。この要因の一つとして、日本の人口・労働人口は今後も減少し続けていくことから、将来であればあるほど一人の移民の人口シェアが大きくなり、その貢献も大きくなることが挙げられる。移民の受け入れ期間が長ければ長いほど長期的な総人口は大きくなるが、各年の移民の数は小さいため、移民の受け入れを開始した当初は経済成長が相対的に小さくなる。反対に、1~2年の短期間に集中して移民受け入れる場合には、最初の頃の経済成長は大きいが、長期的には人口水準が小さくなり、経済成長も相対的に小さくなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」を独自に開発し、このモデルを用いて様々な公共政策について分析を行っている。これらの研究成果をまとめた論文は英語で書き上げられ、査読付きの国際学術雑誌に次々と掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大は様々な影響を与えているが、感染が収束すれば比較的早く元通りに戻るものもあれば、後々までその影響が残るものもある。後者の例の一つとして各国の財政への影響を挙げることができる。各国の政府は感染拡大を防ぐロックダウンを実施したり、国内経済をテコ入れするために財政出動したりしたため、各国政府の財政赤字、債務残高は急増している。このような状況に関して、財政再建を重視する考え方がある一方で、現代貨幣理論(MMT)のようにそれをあまり重要視しない考え方もある。本研究では、「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」を用いて、日本における望ましい長期債務の水準について経済厚生および将来の人口水準の両方の観点から分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーション分析に伴う計算を実施するために、計算速度の速いデスクトップ・パソコンを購入する予定であったが、期待に沿うような計算速度を有する機種が見つからなかった。このため、(パソコンの計算処理スピードの改善は日進月歩であることも考慮して)購入をさらに1年遅らせることにした。 また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響のため、アメリカへの海外出張を来年度に延期することにした。
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