本研究は、海洋漁業資源の漁獲と貿易のデータベースを作成することにより、漁業資源貿易、特にその輸出が各国、各地域(海域)の漁業資源の枯渇に影響を与えているのか、を理論モデルをもとに定量的に分析することを目的とした。途中コロナ禍のため現地調査、学会参加及び報告などが当初想定していた通りにはできなくなる事態とはなったものの、1年延長して研究したことにより、ある程度の成果を得ることはできたのではないかと考える。 本研究全体としては、まず各国の資源管理政策に関する様々な制度や実際の実施状況について、ある程度文献調査と現地調査で把握する予定であったが、コロナ禍により大幅に計画が狂い、実際に現地調査で実地に実態を把握することは十分できなかった。その分資料やデータの調査を増やしはしたものの、この点では十分な調査ができたとは言い難い。しかし、第2のステップとして想定していた、FAOデータベースから得られる各海域の資源状況の情報と魚種ごとの貿易に関する情報、FAOとSee Around Usデータベースなどによる各海域の生産(漁獲)情報など各種データの統合と、それをもとにしたデータ分析については、一定の成果を挙げられたのではないかと考えている。データ分析の途中経過については高崎経済大学産業研究所紀要『産業研究』56号(2001)に掲載された「海洋漁業資源の利用状況と資源枯渇」において既に概要を公表しており、最終的な取りまとめは2024年中に書籍の1章として採用される予定があり、現在鋭意作成中である。 全体をとおして本研究で得られた知見は「当該地域(海域、国)が漁獲した海洋漁業資源を輸出しているほど、その地域の海洋漁業資源の状況が悪化している(枯渇している)ということである。この知見は、海洋漁業資源の悪化が叫ばれている現在において、資源保護のための重要な示唆となりうると考えている。
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