令和5(2023)年度の研究実績として,国際学術専門誌(査読付き)の公刊論文1点および,国際学会の発表論文1点が挙げられる。1点目の公刊済み論文“Pricing regime choices for international airports: per-flight versus per-passenger charges”は国際ハブ空港の利用料金の徴収方法について,議論している。分析では,空港当局が 選択できる徴収方法として,(i) フライトごとおよび乗客ごとの混合料金,(ii) フライトごと料金のみ,(iii) 乗客ごと料金のみ,(iv) 料金ごとに限界運用費用の価格設定を取り上げ,最善策と次善策の観点から異なる徴収方法の優位性について議論している。主な分析結果として,空港当局が負の乗客ごと料金を設定できるとすれば,(iii)の乗客ごと料金のみの徴収方法はその他の方法より優れている,という点が挙げられる。2点目の発表済み論文Airport congestion pricing with cost recovery: per-flight or per-passenger charges charges”は1点目の論文を2つの方向で拡張研究している。方向1は分析モデルをより一般性を持つ設定に拡張する。方向2は異なる利用料金の徴収方法に伴う空港運営費用の回収問題を明示的に分析の視野に入れる。興味深い分析結果として,費用回収可 能な次善策として,(ii) フライトごとのみの徴収方法が社会厚生にもたらす歪みはその他の徴収方法より小さい,という点が挙げられる。これらの論文2点は 本研究の目的と一致しており,得られた研究成果のもとで,航空および空港産業に対する具体的な政策提言がされている。
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