研究課題/領域番号 |
20K01706
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮崎 智視 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (20410673)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 財政政策 |
研究実績の概要 |
2021年度は,前年度に整備したデータを用いて,実証分析を進めた.いずれも,データの吟味と整理,および簡単な分析を終えていたため,具体的な推定を進めた.その際,市町村だけではなく,市に限定したケースでも分析を試みた. まず,阪神大震災の復興策については,いずれの分析であっても,アウトカムとした労働(就業者数)に対して復興策が統計的に有意な結果を得ることができなかった.次に,東日本大震災の復興策については,市町村を対象とした場合には,単純な差の差分析(difference-in-difference,以下DID)では労働に対して有意に正の推定結果が確認された.この結果は,コントロール変数(追加の説明変数)を加えた場合でも同様であり,トリートメント・グループについて,東北地方の被災地と,特定被災地方公共団体をとったケースで推定した場合でも同様であった.一方,Trezzi and Procelli (2014)のように,トリートメント変数と復興投資との交差項についての影響を探ったケースでは,統計的に有意に正の結果を得ることができなかった.復興期間とそれ以外に区分しない場合,公共投資(普通建設事業費ないしは投資的経費)は労働に対して有意に正の効果が得られているため,推定手法の工夫なども含め,さらに検討の余地があると考えられる. この他,市町村データを用いた関連研究として,農地に対する固定資産税改正の効果を探った研究が審査付の国際ジャーナルに掲載された.また,同研究を紹介した前年度の成果物が,日本不動産学会の論説賞を受賞した. また,本科研費に関する研究活動,ならびに受給期間中の成果も含め,これまでの研究活動に対する顕彰として村尾育英会・学術奨励賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた阪神大震災の効果計測に加え,東日本大震災の分析にまで着手し,ある程度の結果を得ることができたという意味では,予想よりも早く研究を進めることができたと考えている.また,関連研究が審査付の海外学術雑誌に公刊されたことや,ディスカッション・ペーパーとして発刊し投稿するなど,その他の研究も進めることができた. かつ,日本不動産学会論説賞,および村尾育英会・学術奨励賞など,いくつかの学術賞を受賞することができた.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2022年度には,審査付学術雑誌への公刊を目指したい.現段階で比較的良好な結果を得られている東日本大震災の復興策に加え,阪神大震災の復興投資についても,分析手法を精緻にすることも含め,より良い結果を得られるように研究を進めたい.過去2年間はコロナ禍のため難しかった現地調査や自治体関係者に対するヒアリングも進めたい.併せて,対面で実施される国際学会にも参加・報告し,海外の研究者からのフィードバックも得たい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,予定していた現地調査や海外出張が取りやめになったため.2022年度は,過去2年間でできなかった,国内の現地調査のほか,国際学会への参加・発表などを行いたいと考えており,そちらに充当する予定である.
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