新型コロナ(covid-19)感染症のため研究期間を1年延長した。今年度は最終年として研究の精緻化と纏めを行った。この1年間の延長にともなってデータ分析の期間を拡張することが可能となり、さらなる詳細なデータ分析の研究を行うことができた。このことは研究の精度を高めた。その上で今年度はこれまでの成果を論文として公表した。内容としてはすでに過去に学会等で報告したものをベースとして研究を拡張、整理したものである。また得られた結果の解釈について多面的に考察をすすめた。 すなわち、グローバル・サプライチェーンへの新型コロナによるショックが、我が国の雇用へどのような影響を与えたのかを、貿易データと雇用データを用いて定量的に把握した。結果として新型コロナのショックがグローバルなサプライ・サプライチェーンを通じて雇用の振動という形で現れことを定量的に捉えることができた。その結果についての理論的な解釈はさらなる検討の余地があるものの、その事象事態の発見が重要な研究の成果であると考えている。 また、理論・データ分析に加え、サプライチェーンのアジア地域における変容について質的な面からの研究としてアジア地域の現地調査を行った。令和4年まで渡航制限などの規制のため停滞していたところであるが、令和5年度は海外調査がほぼ自由となったことから、これまでの理論・データ分析結果を踏まえアジア現地調査を実施した。その主要な結果はこれまでのデータ分析の結果の解釈において重要な示唆を与えるとともに、データ分析の成果を補強するものとなった。研究は当初の目的を達成したが、得られた結果と理論的な解釈には、分析スキーム自体を含めてさらなる研究の可能性があると考えている。
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