研究課題/領域番号 |
20K01713
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
国枝 繁樹 中央大学, 法学部, 教授 (40304000)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金融税制 / 企業税制 / 資産選択 / 認知能力 |
研究実績の概要 |
本研究においては、高齢者も対象に含めたインターネット調査等を実施し、我が国の家計の資産選択に関する分析を行い、高齢者の認知能力低下等も勘案した金融税制のあり方につき具体的提言をしていく。また、企業行動に対する税制のあり方についても研究を行う。 本研究の2年目である令和3年度には、高齢者の資産選択については、研究者の保有する過去のインターネット調査を用いて、年齢、認知能力およびリスク回避度の関係を分析した論文”The Effects of Numeracy and Risk Aversion on Portfolio Choice of the Aged and Their Implications on Capital Income Tax Policy in Japan”を国際財政学会(IIPF、オンライン)で発表した。加えて、金融リテラシーの影響も勘案した新しい論文”An Exploration of the Relation among Financial Literacy, Numeracy, Overconfidence and Risk Asset Investment of the Aged in Japan”を執筆し、日本経済学会・日本財政学会(両者ともオンライン)で報告を行った。 企業税制の研究については、デジタル企業への課税の改革を含む企業課税の歴史的改革が進められていることを踏まえ、完全価格差別の場合のデジタル課税の影響の分析を、研究の中心とすることとし、論文「新しい国際法人課税の考察:完全価格差別モデル」を執筆し、公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度においても、令和2年度と同様、コロナ禍により国内外の学会への対面での参加がかなわず、関連研究者との意見交換の機会が制限された。この点については、今後、積極的に内外の学会に参加することでキャッチアップしていく。 高齢者の資産選択の要因の分析については、過去に行ったインターネット調査に基づき分析を行ってきたが、同調査では金融リテラシーに関する質問が十分でなかったことから、質問内容の見直しを行い、新しいインターネット調査の準備を行っている。 企業税制の影響の分析においては、当初計画では、日本企業の過剰な内部留保蓄積を中心に分析することとしていたが、コロナ禍下で内部留保の重要性が見直され、現時点では適切な内部留保の水準の判断が難しくなっている。他方、企業税制の分野では、2021年10月にデジタル企業への課税の改革を含む国際的な企業課税の画期的改革の合意がなされ、多くの注目を集めていることから、デジタル課税の影響を分析するために、世界的にも新しい完全価格差別に着目したモデルの構築を研究の中心とすることとし、新たな論文を執筆している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍で2年間、国内外の学会への対面での参加が不可能だったが、令和4年度には可能になると思われることから、国内外での学会に積極的に参加し、本研究での成果の内外での発信や関連研究者との意見交換を行っていく。 高齢者の資産選択の要因に関するインターネット調査を、金融リテラシーに関する質問項目を充実させて、令和4年度に新たに実施し、そのデータに基づき、新たな実証研究を行う。また、企業税制に関しては、デジタル課税の完全価格差別モデルをさらに発展させ、国際学会での発表も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により国内外の学会に対面で参加できなかったため、当初計画していた旅費の使用ができす、相当額の次年度使用額が生じたが、令和4年度に積極的に内外の学会に参加していく予定である。また、高齢者の資産選択の要因に関するインターネット調査については、質問事項の見直しを行っており、令和4年度中に実施する予定である。
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