研究課題/領域番号 |
20K01721
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 絢子 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20551055)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 保育 / 労働供給 / 女性労働 |
研究実績の概要 |
本課題全体の計画として、(1)保育所需要の価格弾力性および保育料の女性労働供給への影響、(2)保育所利用可能性が母親の所得に与える影響、(3) 保育料負担が子供への人的資本投資に与える影響 の3つについて分析を行う予定であるが、2020年度は主に(1)保育所需要の価格弾力性および保育料の女性労働供給への影響についての分析を進めた。内閣府経済社会総合研究所の仲介により首都圏にある某市よりデータの提供を受けて、認可保育所の保育料が住民税所得割額に応じて段階的に上がることを利用した回帰不連続法を用いた分析を行い、この分析フレームワークを用いる限りにおいては保育需要は保育料の変化に対して非弾力的である、という結果を得た。得られた結果は、研究協力者との共著としてディスカッションペーパーにまとめて2021年4月に公表した。 この結果の意義・重要性:日本のデータを用いた先行研究では保育需要は価格に対して弾力的であるとされてきたため、本研究の結果が一般化可能であるならば、先行研究の対象となった20年前とは状況が変わり、保育料の増減で保育需要は大きく変化しないということになる。もし、実際に経済社会状況の変化により未就学児の親の労働供給行動が変わったのであれば、政策立案の基礎資料として非常に大きな意義があるものといえる。ただし、先行研究とは手法の面でもかなりの違いがあるため、どの程度が手法やコンテキストの違いに帰せられるものであるかは慎重に吟味する必要があり、これは2021年度以降の研究課題としたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書時点での令和2年度の研究計画 (1)保育所需要の価格弾力性および保育料の女性労働供給への影響について、すでに自治体より提供をうけた住民税の課税データに、新たに提供を受ける保育所利用のデータを接合し、研究計画調書に詳述した不連続分析を行う。(2)保育所利用可能性が母親の所得に与える 影響、(3) 保育料負担が子供への人的資本投資に与える影響については、利用可能なデータを精査し、政府統計の二次利用申請や各種データアーカイブへの利用申請を行う。 (1)については分析を終えてディスカッションペーパーとして公開した。 (2)(3)については、利用可能なデータを調べ、慶応大学の実施している日本家計パネル調査と、東京大学社会科学研究所の若年パネル調査の二次利用を申請して現在整理を行っている。 以上のように、おおむね計画通り順調に推移しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、研究テーマ(1)については研究会での報告などを重ねてフィードバックを得て改稿を重ねる。(2)(3)については、すでに入手済みのデータの整理を進めるとともに、必要に応じて政府統計の二次利用の申請準備も行い、分析を開始する。
|